夏の秘めごと 2
横幅も厚みがあって、傍に来るだけで圧倒される。
「潰すぞ!」
「くっ……!」
「舐められたもんだな。おれのマンツーの相手が一年坊とはな。」
相手のチームは優勝候補の試合巧者で、キャプテンがベンチスタートと見るや、当然一気に禎克の所から攻めてきた。
禎克は、他の選手の中に入ると、どうしても目立って線が細い。ボールごと何度も強引に弾き飛ばされた。離れようとしても、地区予選の洋にはいかない。全国レベルの相手は執拗だった。しかも、リーチも長い。
フロアに転がされる度に、どっと体力を削られた。
こぼれ球の、ヘルドボールに喰らい付いた禎克は、散々に振り回された挙句、ボールごとベンチまで飛んでゆき、観客の間からも悲鳴が上がった。けたたましい音を立てて、パイプ椅子が倒れた。
「金剛っ!」
「くっ、だ、大丈夫っす!いけます!」
完全に舐められている……そう知ると、何とか一泡吹かせてやろうと、かえって冷静に頭は冴えてくる。ふつふつとやる気がわき上がってくるのを、禎克はどこか楽しんでいた。
「おいおい。なんか俺等、すげぇ悪者みたいだな~。可愛いのをいじめないで~って、外野がうるせぇ、うるせぇ。」
「とっととベンチにひっこんで、いい子にしてろよ、一年。インハイは、この間まで中坊だったお前のようなひよこが、簡単に出てこれるような所じゃねぇんだよ。さっさと、先輩と替わった方が良いんじゃないの~。インハイ舐めてんじゃねぇぞ、っつ~の。」
相手チームの執拗な挑発に、思わず何か言いかえそうと思った時、上谷が声を掛けてくれた。
「うちのぴ~ちゃんは、小回り良く働くぜ。、あんたら、そうやって、大口叩いてないと立っていられないほど息が上がって来てるんだろ?まだ、2クォーターもあるのに、そのでかい身体で最後まで走りきれるのか?足元すくわれないようにしろよ。」
「なっ……!!」
図星だった。
確かに、禎克の足にかき回されていると感じていた相手チームは、顔を見合わせた。優勝候補の名に懸けて、無名の初出場校など、最初はダブルスコアで黙らせるはずだったのが、点差が開かないのに次第に苛々してくる。
二メートル級の相手が、二人がかりで禎克を封じ込みに来た。
*****
「金剛、大丈夫か?」
「マネージャー、アイスパック!早く首の後ろを冷やしてやってくれ!」
「マッサージ!ほら、金剛早く足を延ばせ!」
短いインターバルの間に、息の上がった禎克に周囲がケアをし、声を掛ける。
「だ、大丈夫っす……。まだ、いけます。過保護すぎですって……。」
「足はつってないな?お前に当たりが来るだろうと分かっていたが、見事にやられたな。うちは他所と違って代わりがいないんだ、持ちこたえてくれよ。」
痛みどめのコールドスプレーが、一気に痛みを凍らせて持ってゆく。
「ファールぎりぎりなんだが、やっぱりうまいな。審判も笛を吹こうかどうか、相当悩んでるみたいだ。」
「わかってても、当たられちゃうんで……もう少し持ちこたえれればいいんですけど、ダブルで押されたら、どうしてももたなくて……すみません。」
膝を痛めて先発から外れたキャプテンが、監督と共に練った作戦指示を出した。
「いいか。点差は6点だ。上谷のスリーなら二本でひっくり返せる。金剛がボールを持った時に、必ず二人がかりで潰しに来るから、その時にきついだろうけど、金剛は気合入れて持ちこたえろ。いいな。」
「はい。」
「ディフェンスが少しずつセンターに引っ張られたら、必ずどっちかのサイドが空くから、その時にゴール下に上谷が走る。金剛に声を掛けるのは囮のフォワードだ。パスは顔の反対側に出す。ゴール下からラインぎりぎりでスリーを打て。いいな、一年の金剛が、ここまで身体を張ってるんだ。意地でも入れろよ、上谷。」
「おいっす。」
「先輩。一つ提案があるんですけど……。」
「ん?」
「一度出したパスを、すぐに自分に戻すのはどうですか?一度、相手が離れたら戻るまでに、間が空きます。そうしたら、リターンパスをゴールに向かって苦し紛れの届かないエアシュートみたいにして、リング傍に高く入れますから。」
上谷が肯いた。
「パスミスと見せかけて、アリウープに持っていくか!」
「ええ。決まれば、向こうの度肝抜けます。こっちの方が足は動いているから、やってみる価値ありだと思います。」
「よっしゃ。体力ぎりぎりまで、かきまわしてみるか?」
「行くぞ!走って来い。驚かしてやろうぜ。」
「っしゃああーーー!!」
全員が一つになった。
きゃああ~~~!!
此花憧れの絵師さま「カロリーハーフ」のchobonさまに、ユニホーム姿のさあちゃんをいただきました。
インターハイ初出場で、がんばるさあちゃんです。(*⌒▽⌒*)♪かっこいい~♡
眼精疲労でご無理できないはずなのに……(ノд-。)でも、でもっ……うれしいよう……。
童顔で身長ばっかり大きなさあちゃんです。(〃゚∇゚〃) 自分で描いたさあちゃんより、いただいた絵のほうがイメージに合っている気がします。この、躍動感、細くても筋肉の付いた感じ。見入ってしまいます。
きゅんきゅん~(〃゚∇゚〃)
本当にありがとうございました。励みにがんばります。(`・ω・´)
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