夏の秘めごと 4
「あれ?上谷先輩?さっきまでいたのに……。」
「キャプテンを迎えに行ったんじゃないのか?」
ボールを入れたバッグも見当たらない。
「ちょっと、捜しに行ってきます。」
用具運びは一年の仕事だと思い、もう一度控室に戻った禎克は、ドアの前で固まった。
上谷の低い嗚咽とキャプテンの慰める声が聞こえてきた。
「……うっ……うっ……。」
「インハイ……終わったんだな。もう一度、お前と同じフロアでやりたかったよ。」
「先輩……っ。俺……このまま終わりたくはなかったです。」
「俺も、怪我さえなかったらとは思うが、これも仕方がない。だがな、この怪我があったから、上谷が俺に応えてくれたと思っている。そう思えば、耐えられるさ。」
「怪我のせいなんかじゃないです。そんなの自分の気持ちに気付いた単なるきっかけで……俺はあなたのプレイに憧れてここまでやって来たんだから。あなたが居なかったら、おれはここにはいなかった。」
「俺が怪我の後、腐らずに済んだのは彩がいてくれたおかげだよ。バスケは高校だけじゃない。彩が大学でもずっと一緒にやりたいって言ってくれたから、何とか吹っ切れた。彩が後を追って来るなら、怪我を直してもう一度頑張ろうと思えたんだ。」
「ずっと……中学の時から、あなたは俺の憧れでした。遠い遠い存在で、こんな近くで話ができるとも思っていなかったし、役に立てるとも思っていなかった。」
鈍い禎克も、さすがにこの会話を聞いて、少しおかしいと感じ取った。
先輩を「あなた」と呼ぶ上谷は初めてだ。
普段、全ての部員を苗字で呼ぶキャプテンが、上谷を彩(ひかる)と下の名で呼ぶのも初めてのような気がする。
「これ……って?」
「彩は俺が考えてた以上に、チームを良く支えてくれたよ。お前ら二年は、人数が多い上に推薦で入ってきた奴が何人かいたから、まとめるの大変だったろ?彩が支えてくれたから、このチームはここまでこれたんだ。一年の金剛が、すんなりレギュラーに溶け込めたのも、お前がちゃんと気配りしたからだって知ってる。二年の間でブーイングが出たのもな。」
「あなた……がいたから、おれは頑張れたんです……。いつも、見ていてくれたから……。」
「彩、おいで。」
「達也さん……。」
「んっ……。」
(うわ~~~~~っ、上谷先輩とキャプテンがっ……!?)
叫び声をあげそうになって、禎克は口を覆った。そして思い出した。
自分が少し前、大二郎と別れる時こんな風ではなかったか?
傍から見ると、こんな気恥しい空気だったのか……。体中の血が顔面に集中した。
(これって……これって。)
(°∇°;) 「うわ~……!」
(ノ´▽`)ノヽ(´▽`ヽ) 「彩~」「達也さ~ん」らぶらぶ~
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上谷先輩には、どうやら意中の人がいるみたいです。
うふふ~
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