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流れる雲の果て……16 

薄く目を開ければ、何度か腰を打ち付けた大二郎の、のけぞった喉元が汗で白く光るのが見える。
何て、可愛いんだろう……と美千緒はぼんやりと考えていた。覚えのある質量が、やがてぐんとかさを増して、そこがいっぱいになる。

「あ……あ……、大ちゃん……」

動きを合わせてやろうと思ったが、身体が思うように動かなかった。ふと、脳裡に医師の冷ややかな声が横切った。

「いいですか?この際、はっきりと言いますが、身体に負担のかかる性行為はやめてください。弱っている時に性交渉は命取りになりますよ。」

座る自分の肩に手を置き、立っていた恋人の方が、震えていた。
命に未練はなかったが、傍に居る恋人が酷く苦しそうなのが辛かった。

「大丈夫だ、美千緒。諦めないでがんばろう。な?」

帰り道、まるで自分に言って聞かせるように、一緒に闘病しようと松井聡は告げた。
あれから一度も自分に手を伸ばさなかった律義な恋人は、他に恋人を作れと言っても肯かなかった。そればかりか、時間の許す限り張り付いて世話を焼いた。
無理をしていると分かっていたから、思い切って別れようと告げたが首を振った。

「おれが美千緒の傍に居たいんだ。世の中にはセクスレスの夫婦なんて掃いて捨てるほどいるよ。そんなことどうだっていいから、美千緒は病気を治すことだけ考えて。ね?」

「……聡。」

治る見込みのない病気が怖くて、腕に縋りたかった。
だが、しばらくして美千緒は、聡の前から姿を消した。

病気だけではなく、母親から何度もかかってくる電話が、美千緒を追い詰めた。

*****

「美千緒さん!美千緒さんっ。」

自分の名を呼ぶ悲痛な声に気が付いた。身体ががくがくと揺すられている。

「死んじゃやだぁ……美千緒さん~。美千緒さん~。」

「大ちゃん……ごめんね。ちょっと疲れただけ……心配しなくていいんだよ。」

くす……と美千緒は笑った。

「それより、ぶら下がってるそれ、落ちそうになってるから始末して。」

「う……ん。ほんとに、ほんとに大丈夫?」

「おじさんだからね。若い大ちゃんを相手にして、ちょっと頑張りすぎたんだ。」

自分の物で腹が濡れていた。命を削るように吐精するのは良くないと分かっていたが、懸命な大二郎に応えてしまった。

大二郎は、蒼白になった美千緒が死んでしまったと思ったらしい。
少しの間、気を失っていたらしかった。これほど体力が無くなっているとは、自分でも思わなかった。

起き上がろうとして力が入らず断念した。

涙ぐんだ大二郎がガスコンロで湯を沸かし、タオルを濡らして、黙々と美千緒の身体を拭く。
満ち足りたセクスではあったが、無理をさせたのだと思うと切なかった。
大二郎が背中に張り付いて、温かいタオルでそっと背骨をなぞった。




命を削るようなセクスです。


。・゚゚ ’゜(*/□\*) ’゜゚゚・。「美千緒さん~」

(´・ω・`) 「ごめんね。大ちゃん。」

これから、色々わかってきます。此花咲耶

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1 Comments

此花咲耶  

nichika さま

コメントいっぱいいただいて、舞い上がるほどうれしいです。
どなたのコメントも、此花の拙い作品に寄せてくださった宝物です。
しかも、nichikaさんは時代物好き…___φ(。_。*)メモメモ゙
新しいお話を書きはじめています。うふふ……時代物なので、読んで下さる方がいるかなぁと心配していたのですが、読者さま一人、見つけた~~(*⌒▽⌒*)♪
がんばろ~!

2013/02/19 (Tue) 14:12 | REPLY |   

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