流れる雲の果て……13
「明日はお休みだから、ゆっくりできるね。大ちゃん。」
「うん。やっとお休みが貰えるよ。梅川は膝を曲げっぱなしだから、おれ、あちこち筋肉痛なんだ。」
「そうか。お客さんに綺麗に見せる格好って、結構きついものね。」
「身体はお師匠さんにくっつけて、顔はお客さまの方に向ける箇所多いからね。テレビとかに出始めて、お師匠さんの演出、前よりもきつくなったから大変。殆どアクロバットだよ。」
そう言いながらも、大二郎はどこか嬉しそうだった。
求められるものが多くなったのも、自分が出来るようになったからなんだと、頬を染めた。
「もう教えることはないから、お師匠さんが、おれにお父さんって呼んでもいいって。」
「そう。醍醐さんに、褒めてもらったのがそんなに嬉しかったのか。大ちゃん、何だかいつもより大人っぽい顔してる。お父さんの事、本当に好きなんだね。」
「うん。尊敬してる。おれ、お師匠さんみたいに、いつか自分の劇団背負えるようになりたいの。」
「大ちゃんならなれるよ。きっと。」
「ありがと。」
照れたようにそう言った大二郎は、つないだ手をぶんと大きく振った。
手が届きそうで届かない美千緒と、たくさん話をしようと思っていた。
美千緒の抱えた影に何が有るのかわからなくても、自分は明るく傍に居よう。
そうすれば、これからもつないだ手を放さずに済むかもしれない。
*****
だが、そんな大二郎のささやかな希望は、すぐに打ち砕かれることになる。
切れかかった街燈の下から、ぬっとあらわれた男が声を掛けてきた。
「美千緒……?」
「さ……。」
一瞬すくんでしまった美千緒が、つないだ手に力を込める。
「さ、早く部屋に行こう、大ちゃん。お腹すいただろう?一緒に食べようと思って、お弁当買っておいたんだ。プレミアムロールも好きだったね。」
「うん。好き。」
ぐいぐいと強く手を引っ張る美千緒は、青い月光の中で強張った顔をしているように思えた。ぱたぱたと急ぎながら、思わず問うた。
「ね。電柱のところに居た人、美千緒さんって呼んだんじゃないの?」
「知らない。声を掛けて来たのなら……きっと、大ちゃんのファンの人だよ。」
「そうかなぁ。」
背後に視線を感じながら、二人は手をつないだまま、外階段をぎしぎしと言わせながら登った。
錆の浮いた鉄の階段はペンキが剥げて、乾いた魚の肌のようにざらざらとしている。
つないだ美千緒の手は、何故かひどく冷たかった。
│ω・`) 「美千緒……?」
(´・ω・`) 大二郎「誰なんだろう……あの人。」
♪~(・ε・。)美千緒「きっと、大ちゃんのファンだよ。」
これからお話が動きます。
その前に、此花史上120パーセントの大ちゃんと美千緒さんのらぶらぶがあるんだよ……←大問題どす。
(`・ω・´)がんばります!←大丈夫か~
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