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沢木淳也・最後の日 4 

優しく髪をかきやると、周二はことさら明るく告げた。

「……きっとすぐに帰ってくるから、心配すんな。」

「ん……。」

「今までだって、俺といちゃこらしてたら、速攻で邪魔しにやって来てただろ。それに、くそ親父には木本すら太刀打ちできなかったんだ。そんな鬼みてぇな奴が出て行くんだから、でかい山もすぐに片付くって。男らしく待ってようぜ。」

「ん……ぼく、漢(おとこ)だもん……平気。漢らしく待ってる。」

「それよりさ。……隼。」

そっと寝台に横滑りさせて、周二は隼を転がした。
パイルのガウンの裾をそっとめくると、期待に心臓が跳ねる。薄紅色の大人になり切っていない少年のままの容は、いつみても周二を切なくさせる。本当ならとっくに大人になっているはずの隼の痛ましい過去を思い出し、丸ごと愛おしくてたまらなくなる。
それでも少しずつ、隼は周二の傍で大人になろうとしていた。
指ではじいたら、ちっこいぴんくのぞうさんが、薄い下草からくんと角度をもたげ、色が強くなった気がする。
ぱお~……

「隼……やっべ。まじ、かわいい。おれのアフリカ象が、うずくぜ。」

「周二くん……純愛はぱんつ脱がないことって、パパが……。」

「今、風呂上りで穿いてないだろ?」

「えっと~……」

「元々穿いてないときは、特別ルールでっす。」

「きゃあ~」

しゅっとガウンの紐を抜いた。

「……おい……」

「ん?木本?」

「楽しそうだな、野獣。」

細く開いた扉の向こうから、地獄の番犬(ケルベロス)のうなり声がする。

「いっそ、おいたができないように、全身海綿体のおまえに貞操帯使うか……?」

冷たい金属の音が背筋を凍らせた。隙間から覗いた銃口は、まっすぐに周二に向けられ、ガチャリと本気で撃鉄が起こされる。
毎度の事ながら、沢木の眼は本気だった。

「げっ……マンモス!!じゃなかった、くそ親父っ!戻ってきやがった。」

周二は隼から飛び離れた。

「隼が世話になるから、礼代わりにおれの撮りためたスマホの写真をやろうと思ったが、やめた。」

「え?」

「隼の寝乱れた夜とか、物憂げな朝の顔とか、キス待ち顔とか……いっぱいあったんだがな。俺が帰ってくるまでお預けだな。」

「が~ん……」

キス待ち顔って何?
寝乱れた夜って…………あ、やばい。
鼻血ぶ~……

「きゃあ~、周二くんが大変~!」

慌てた隼が思わずシーツを引っ張って周二の顔を拭いたものだから、周二の顔はまるで血まみれの赤鬼の姿になった。

「あっははは!ひでぇ面だな、野獣。」

「パパ。笑っちゃだめ。周二くん、鼻血でやすいんだから。上向いて、静かにしてて。松本さ~ん、氷をください。」

思いがけずてきぱきと采配を振るう隼を、目を細めて見つめていた沢木は静かに部屋を出た。

「沢木の旦那。」

沢木は何も言わず、深々と腰を折って頭を下げた。
ただ事ではない。
木本は同じように頭を下げながら、長い別れを予感していた。





( *`ω´) パパ沢木 「……ったく、油断も隙もありゃしない。預けるのやめるか。」

(°∇°;) 周二 「え~っと。純愛でがんばりまっす。」

(〃゚∇゚〃) 隼 「周二くん~♡」

本日もお読みいただき、ありがとうございます。此花咲耶


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