沢木淳也・最後の日 8
捜査員をすべて班分けにし、それぞれチームを組んで捜査は進められる。捜査に関わる人数は、今回の殺人事件が広域捜査になったことで異例の多さになった。
西署の沢木が連れた新人が実はキャリアで、その名前から鹿島警視監の息子だという事は、すでに知れ渡っていた。全国26万警察官のトップになるべき人物は、これまで例外なく警視監二十名の中から選ばれている。鹿島雄一の父、鹿島警視監もいずれは上り詰めるだろうと、その場に居た者は、さざ波の様に小声でささやき合った。
「よりによって、キャリアの教育係が、なぜ沢木さんなんだ?」
「実績を買われたからなのかもしれないけど、沢木さんも、新米がキャリアの警部補じゃやりにくいだろうなぁ。」
「何もわからなくても、配属と同時におれ等を飛び越えて、警部補なんですからね~。頭の良いやつには、叶いませんね。鹿島警視監なんて、おれ、顔も見たことないっすよ。」
「仲良くなっといた方が、今後の為にもいいかも。」
ガン!
わざと音をさせてパイプ椅子を引き、沢木は周囲の心無い噂をやめさせた。
静かに鹿島も隣席に着いた。
捜査に当たる刑事は、それぞれ班長以下に配置され、各自いつものやり方で、互いに情報を共有しあう。だが、彼らは決して掴んだ糸口をすべて明らかにすることはない。互いに腹を探りあい、協力し合いながらも、一方では手柄を上げるのを優先させる。組織というものはそういうものだ。
ただ今回は、身内が絡んでいた。運悪く誘拐された少年たちの親が、揃って警察官だったから、警察は面目をつぶされたことになる。捜査本部の椅子の配置はいつもと変わりないが、通常の捜査会議よりも空気が張りつめているなと、沢木は思った。
本庁の捜査員も同席し、次々と事実関係が報告されていくのを、捜査員たちは聞きながら漏らさぬように忙しなくメモを取っていた。
*****
1.遺体は全て、息を引き取ってから数時間後には、遺棄されている。
2.犯人は、誘拐した少年たちに怨恨はなく、殺傷理由はわからない。愉快犯の可能性もあり。
プロファイラーは、おそらく主犯は20代から30代の男と弾きだし、遺棄現場から数時間内にある廃屋、もしくは人の出入りの無い廃ビルなどで少年たちは殺害されたと断定した。計画的で頭はいいが、自尊心が高く稚拙な所のある人間……沢木も書き込んだ。
3.補足、同性愛者、臆病。複数犯。
鑑識が途中で、データを持って現場周辺の予測を立て報告に来た。膨大な音声データの中に含まれた、現場を割り出す工事現場の機械音を見逃すはずもない。
「まず、殺害現場を突き止める。室内の壁はコンクリート打ちっぱなしだと結論。都内での工事個所は以上。東西南北に別れて、沿線で犯行場所を探してくれ。」
ざっと捜査員たちが席を立つ。
警察の威信をかけた捜査が始まった。
(°∇°;) B……BL小説……なのか~~……?
え~と。パパ沢木は刑事なのでこういう場面も必要なのです。(`・ω・´)まじで。
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