沢木淳也・最後の日 15
沢木は朦朧としながらも、相手に掴みかかろうとしていた。
必死に伸ばした腕を、相手は難なくすり抜けた。
「な……にを使いやがった?」
「ん~?薬品名で言うなら、パンクロニウム……?なんてね、冗談ですよ。そんなきついものじゃありません。怖いなぁ……そんな恐ろしい顔しないでください。雄ちゃん、なぁにこの人、薬が効かないの?まじこわいよ~。」
「パンクロニウムだと……?」
筋弛緩剤の一種、パンクロニウムはアメリカでは死刑執行の際に使われる。そんな薬物の名を一般の人間が知るはずもない。
「お……まえは?なに……だ……」
「何者って聞きたいの?雄ちゃんのお友達でっす~。心配しないで、おまわりさん。僕は医者だから、こういったものの扱いに慣れているんだ。雄ちゃんはおまわりさんが嫌いだけど、僕はそんなに嫌いじゃないよ…………雄ちゃんのお父さん以外のおまわりさんは、大抵優しいですもん。あいつだけは、最低だけどね。あいつは、僕の雄ちゃんを泣かせてばかりだ。」
青年は吐き捨てるように、口にした。
沢木の視界がぐらりと揺れ、相手の顔が歪んだ。
恋人が医者だと言ったのは本当だったのか。間延びした喋り方に聞き覚えがあった。
そうだ……あのディスクの中で、少年をいたぶって哄笑を上げていた男の声だ。
意識を何とか保とうとしたが、闇が這い上ってくる。
「雄ちゃん。新しい献体はできたの?僕、練習しないと。もう二度と失敗できないんだよ……ねぇ~ってば……」
意識を手放すまいとした沢木の耳に入った言葉は、そんな会話だった。沢木に締め落された鹿島が何とか身体を起こし、何か言葉を発した気がしたが、沢木には聞こえなかった。
爪先で男が沢木の身体を軽く蹴った時、パンツのポケットから携帯が滑り落ちた。
「やだなぁ、このおじさん、やばいことしてる~。雄ちゃん、ねぇ、ちょっとまずいから場所かえようよ。」
男は、携帯が通話になっているのを確かめると、静かにかかとを乗せて踏みつけ、会話を聞いて居た木本も、沢木の陥った状況を把握した。
*****
「そう……?いいよ。雄ちゃんがそうしたいなら、そうしてあげる。このおまわりさんがそんなに好きなの、雄ちゃん?僕よりも?」
誰かの顔が近づいてくる。
「……かし……?」
「ごめんなさ……い。沢木さん、ごめんなさい。」
這って近寄ってきた鹿島が、泣きながら沢木に触れる。両頬は痺れていたが、手で触られている感覚はあった。
キスをされているのだと分かったが、もう沢木には抗う力もなかった。弛緩したあごから溢れた唾液が、つっと筋になって零れた。
Σ( ̄口 ̄*)ぴ~~んち!!??
パパ沢木の運命は一体どうなるのでしょうか。(`・ω・´)←
本日もお読みいただきありがとうございます。拍手、ポチ、コメントもありがとうございます。
とても励みになっています。 (〃゚∇゚〃)
必死に伸ばした腕を、相手は難なくすり抜けた。
「な……にを使いやがった?」
「ん~?薬品名で言うなら、パンクロニウム……?なんてね、冗談ですよ。そんなきついものじゃありません。怖いなぁ……そんな恐ろしい顔しないでください。雄ちゃん、なぁにこの人、薬が効かないの?まじこわいよ~。」
「パンクロニウムだと……?」
筋弛緩剤の一種、パンクロニウムはアメリカでは死刑執行の際に使われる。そんな薬物の名を一般の人間が知るはずもない。
「お……まえは?なに……だ……」
「何者って聞きたいの?雄ちゃんのお友達でっす~。心配しないで、おまわりさん。僕は医者だから、こういったものの扱いに慣れているんだ。雄ちゃんはおまわりさんが嫌いだけど、僕はそんなに嫌いじゃないよ…………雄ちゃんのお父さん以外のおまわりさんは、大抵優しいですもん。あいつだけは、最低だけどね。あいつは、僕の雄ちゃんを泣かせてばかりだ。」
青年は吐き捨てるように、口にした。
沢木の視界がぐらりと揺れ、相手の顔が歪んだ。
恋人が医者だと言ったのは本当だったのか。間延びした喋り方に聞き覚えがあった。
そうだ……あのディスクの中で、少年をいたぶって哄笑を上げていた男の声だ。
意識を何とか保とうとしたが、闇が這い上ってくる。
「雄ちゃん。新しい献体はできたの?僕、練習しないと。もう二度と失敗できないんだよ……ねぇ~ってば……」
意識を手放すまいとした沢木の耳に入った言葉は、そんな会話だった。沢木に締め落された鹿島が何とか身体を起こし、何か言葉を発した気がしたが、沢木には聞こえなかった。
爪先で男が沢木の身体を軽く蹴った時、パンツのポケットから携帯が滑り落ちた。
「やだなぁ、このおじさん、やばいことしてる~。雄ちゃん、ねぇ、ちょっとまずいから場所かえようよ。」
男は、携帯が通話になっているのを確かめると、静かにかかとを乗せて踏みつけ、会話を聞いて居た木本も、沢木の陥った状況を把握した。
*****
「そう……?いいよ。雄ちゃんがそうしたいなら、そうしてあげる。このおまわりさんがそんなに好きなの、雄ちゃん?僕よりも?」
誰かの顔が近づいてくる。
「……かし……?」
「ごめんなさ……い。沢木さん、ごめんなさい。」
這って近寄ってきた鹿島が、泣きながら沢木に触れる。両頬は痺れていたが、手で触られている感覚はあった。
キスをされているのだと分かったが、もう沢木には抗う力もなかった。弛緩したあごから溢れた唾液が、つっと筋になって零れた。
Σ( ̄口 ̄*)ぴ~~んち!!??
パパ沢木の運命は一体どうなるのでしょうか。(`・ω・´)←
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