優しい封印 18
それまでは、普通の生活に戻る母に心配を掛けないようにと、明るく振舞っていたが、駅が近づいてくると声のトーンが落ちた。
「お母さん。じいちゃん達がきっと、力になってくれる。お父さんも、諦めてないと思う。だから……だからさ……」
母も優しい笑顔を向けた。
「お母さんは大丈夫よ。仕事がお休みの日には、涼介の好きなもの作って会いに来るわね。涼介が優しい人たちと一緒で、本当に良かったと思っているの。最初、月虹さんにお会いしたときは見たことない程綺麗だし、他の方は何だか怖くてどうしようと思ったけど、お話したらすごく安心した。涼介はお母さんといるより、あの方たちと一緒にいる方が安全だと思う。」
「お母さんは、今は会社の寮にいるの?」
「ええ。でも鴨嶋さんが、事が片付くまででもいいから、できれば家に来いって言って下さったの。仕事はこの町でなら世話してやるからって……」
涼介は思わず母の前に出た。
「じいちゃんがそうしろって言うなら、きっとそうした方がいいと思う。お母さんの仕事って事務だろ?なんか……おれ……正直言うとさ、お母さんのことも心配なんだ。だって……あいつは、本当に怖ろしいやつなんだよ。だから、お母さんも思い切って、じいちゃんの家に世話になろうよ。おれ、じいちゃんのお世話係なんだ。あんまり役に立ってないけど、じいちゃんはおれの事、孫みたいだって言ってくれてる。出来ることを一生懸命やるよ。」
「そうね。お母さんもその方がいいと思う。明日、上の人に話をしてみるわね。待ってて、涼介。」
「うん。じゃあね、気を付けて。」
改札で手を振って別れた涼介は、すん……と鼻をすすった。
「あ。」
離れて付いてきていた六郎を見つけると、勇んで飛びついた。
「兄貴っ!六郎の兄貴って呼んでもいいですか?」
「唐突になんだ。こら、懐くんじゃねぇ。俺はガキは嫌いなんだよ。」
「じいちゃんと月虹の兄貴と、六郎の兄貴とおれ。ねぇ、男ばっかりだけど家族みたいだね。」
「ばか野郎っ。元々うちはアットホームが売りなんだよっ。」
「うふふ~。おれの事、いつも近くで見守ってくれてるでしょ。知ってるよ。」
「おやっさんに頼まれたから、仕方なく見張ってるのに決まってるじゃねぇか。それに、おまえみたいなひよこがぴよぴよ歩いてたら、誰が攫うか分からねぇからな。」
「おれ、誰にでもついて行くような馬鹿じゃないぞ。」
六郎はその場で、思わず吹いた。
「ははっ……お前、月虹の兄貴が言ってたぞ。食われそうになってたのを拾ったって。」
「う~、そうだった~。」
「仕方ないなぁ。兄貴になってやるよ、涼介。元から月虹の兄貴もそのつもりだ。面倒見る気がなかったら、あの人は声を掛けたりしねぇからな。」
「うんっ。おれ、一人っ子だから何かうれしい。」
少し弾んだ気持ちで、涼介は早足で六郎と鴨嶋組に戻った。
そして鴨嶋劉二郎は月虹と共に、手を尽くして間島との接点を探していた。
本日もお読みいただきありがとうございます。
(*⌒▽⌒*)♪涼介「おれね、一人っ子だったから、兄貴ができてうれしい。」
(〃ー〃) 六郎「ば、ばかやろう。なつくんじゃね~」
新しい展開がありそうです……
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