純情子連れ狼 3
「げっ!朱美っ。なんでっ!?」
硝子障子を開けるなり、転がるように飛びついて来た女性を認めると、周二は反射的に後ずさった。妾が逃げかけた周二の肩を押し、静かに戸を閉めると恐ろしい言葉を吐いた。
「そこにいるのは、あんたの子だそうだよ。」
「なっ!?……おでにょdjdpwkdfこ―――――っっ!?(俺の子――――っっ!?)」
「そう。身に覚えあんだろ?」
「……あわわ……」
正直、身に覚えはある。
むしろ、有りすぎるくらいだ。
隼と付き合い始めてからも、周二は自宅にまで来てくれる綺麗なお姉さんたちの世話になっていた。あんあんの声が獣のようで怖いから嫌だと隼が言うから、仕方なくそういった女とは全て手を切った。
周二は雄の本能のまま当たり前のようにして、14歳の時から普通に女を抱いてきた。浮気とかつまみ食いとか、そんな風な名称のものではない。周囲も似たようなものだったから、隼に指摘されるまで、自分の行動がおかしいと思ったこともなかった。
朱美は小さなころから知っていて、連れ歩くには互いに見目も良いし、気が合って遊んでいるうちいつしか自然にそう言う関係になった。似た境遇で育ったせいか、二人とも同じように気が強く、まるで姉弟のように考え方もよく似ている。
似ているのも道理、亡くなった周二の母親の妹の娘で、周二の年上の従姉弟だった。
「でもよ~っ!おめぇ、あん時はピル飲んでるから大丈夫って言ってただろ?」
「そうなのよ~、成り行きだったのに不思議よね。生命の神秘ってやつ?」
「ふざけろ。冗談にならねぇぞ。」
「悪かったわよ。だから周ちゃんには言わずに、一人で育てる事にしたんじゃない。」
「それにしてもよ~。冗談ですむ話じゃないだろ?」
「ま~ね。」
豊かな艶のある黒髪をかき上げた朱美は、相変わらず妙に色っぽい。
「ふふっ。あたしも結構遊んでたから、ほんとは周ちゃんの子かどうか自信がなかったの。でも、この子ったらだんだん周ちゃんに似て来るし、それにほら、見てよ……。同じ所にほくろがあるのよ。」
ぺろりとおむつをめくってお尻を見せた。
同じ大きさのほくろが三つ並んでいる……。周二はその場に頭を抱えて尻もちをついた。これまで散々遊んできたが、こんな話にはなったことがない。
「まじかよ。お前は遊びで子供作るような女じゃなかったはずだがな。」
「……まぁね。周ちゃんには言わないでいようと思ってたんだけど、ちょっと状況が変わったのよ。結婚したい男が出来たの。」
「朱美。お前が惚れた奴なら、子供の一人や二人いてもなんも言わねぇだろ?男の好み、変わったのか?堅気の奴でもいいけど、けつの穴の小さい男だけはやめとけよ、苦労するぞ。……つか、気の強そうな顔してんなぁ、こいつ。」
「周ちゃんに、似てるでしょ?」
「ふぇ……ん……」
周二が手を伸ばして赤ん坊を抱こうとすると、赤ん坊は嫌がって朱美の後に隠れた。慣れた手つきで朱美は抱き上げて子供をあやした。
「あの人は、たぶん何も言わないと思う。でも、色々あってね……」
「あたしね、この子がとても可愛いの。命と引き換えにしてもいいと思ってる。周ちゃんの事、今は何とも思っていないし、今の彼が一番好きよ。でも、明日どうなるか分からないような場所に、この子を連れてはいけないの。かといって、あの人を一人送り出す勇気もない。……一人残る選択肢もあるけど、あたしも結局考え方が堅気じゃないのかな。今は、何を置いてもあの人の傍に居たい。だから、しばらくこの子を預かってください。お願いします。どうしてもしなくてはいけないことが有るの。」
その場にぺたりと手をついた朱美の語尾が震えていた。
本日もお読みいただき、ありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
どうやら預かることになってしまいそうです。大丈夫かな。(`・ω・´)「だいじょぶ!」←得意料理は冷奴。
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