朔良咲く 21
「いずみちゃんが、頑張れますように。」
「さくらちゃんが、がんばれますように。」
*****
互いに送りあったエールは、ぎこちなく幼稚なものだった。
それでも大切な儀式のような気がして、朔良はいずみの触れた額をそっとなぞってみる。
「いずみちゃん。そろそろ、お部屋に戻ろうか。ママが心配するといけないから。」
「はい。」
いずみの手を引いて、朔良は病室の前へと戻った。
「いずみちゃん、またね。手術頑張って。」
「さくらちゃん、ばいばい。」
つないだ手を看護師に渡した朔良は、何やら物言いたげな表情を浮かべる母親に、軽く頭を下げた。
母親も礼を言うつもりで、朔良を待っていたらしかった。
「いずみちゃん、ママはお話が有るから、先にお部屋に入っててね。」
「は~い。」
朔良は小さく会釈をした。初対面ではない。
「あの……お時間を頂いて、ありがとうございました。」
「こちらこそ、たくさんプレゼントを頂いて、ありがとうございました。いずみに勇気を与えてくださって、感謝いたします。」
「いえ……。僕の方こそ、いずみちゃんに力を貰いましたから、そのお礼です。」
「リハビリの島本先生からお話を伺いました。いずみは織田さんと会ってから、すごく前向きになったそうなんです。今日も会えるのを、とても楽しみにしていました。」
「僕もです……柄にもなく、こんな格好で来てしまってお恥ずかしいです。」
「いいえ、とても素敵です。いずみがさくらちゃんは王子さまなのって、楽しそうに話をしていました。この間お会いした時も、素敵な方だと思いましたけれど、本当にいずみの言う通り王子さまみたいです。」
朔良は微かに微笑んだ。
これまでそんな風に言われても、面映ゆいばかりで嬉しくもなんともなかった。
しかし、小さないずみの役に立ってると聞くと、胸の奥がぽっと温かくなった気がする。
「あの……いずみは、転院して東京で手術をすることになりました。院長先生のご友人でアメリカ在住の脳手術の権威と言われる方が、腫瘍の位置を見て自分なら出来るとおっしゃってくださったんです。」
「そうですか。上手くいくよう祈っています。いつ行かれるんですか?」
「検査もありますし、早い方が良いそうなので、今週末には行く予定です。」
「ずいぶん急なんですね。」
「ええ。いずみに話はしたのですが、ちゃんとわかっているのかどうなのか……」
朔良はいずみが誰よりも自分のことを理解していると伝えたかった。
「いずみちゃんは、まだ小さいから出てくる言葉は子供のものですけど、僕なんかよりはるかにしっかりしています。手術が怖くて泣いてしまったから、ママにもごめんなさいするのって言ってました。」
「病気になってから聞き分けばかり良くなって……あまりいい子になったら、神さまに愛されて死んでしまうような気がして、もっとわがままを言ってもいいと思うんですけど……あ、すみません。」
母親は心の内を零し、肩を震わせて咽んだ。
「実は、僕はこれから理学療法士になろうと思っています。受験もブランクがあるし、簡単にはいかないだろうけどやってみるつもりです。いずみちゃんに、僕が負けないように頑張ると言ってたと、伝えてください。」
「そうなんですか。理学療法士に。それは、あの……島本先生の影響ですか?」
「そんなことは……」
朔良は内心、それだけはないと言い切りたかったが、仕方なく極上の笑顔を向ける事でごまかした。
本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
( *`ω´) 「なんで僕が、あんな奴の影響受けるんだ。冗談じゃないぞ~、ぼけ~、かす~」
(´-ω-`)←そういいたいけど、いずみちゃんのママが相手なので笑ってごまかした朔良。
いずみちゃんは、手術をするみたいです。
うまくいきますように。
(〃゚∇゚〃) 「がんばる~」
「さくらちゃんが、がんばれますように。」
*****
互いに送りあったエールは、ぎこちなく幼稚なものだった。
それでも大切な儀式のような気がして、朔良はいずみの触れた額をそっとなぞってみる。
「いずみちゃん。そろそろ、お部屋に戻ろうか。ママが心配するといけないから。」
「はい。」
いずみの手を引いて、朔良は病室の前へと戻った。
「いずみちゃん、またね。手術頑張って。」
「さくらちゃん、ばいばい。」
つないだ手を看護師に渡した朔良は、何やら物言いたげな表情を浮かべる母親に、軽く頭を下げた。
母親も礼を言うつもりで、朔良を待っていたらしかった。
「いずみちゃん、ママはお話が有るから、先にお部屋に入っててね。」
「は~い。」
朔良は小さく会釈をした。初対面ではない。
「あの……お時間を頂いて、ありがとうございました。」
「こちらこそ、たくさんプレゼントを頂いて、ありがとうございました。いずみに勇気を与えてくださって、感謝いたします。」
「いえ……。僕の方こそ、いずみちゃんに力を貰いましたから、そのお礼です。」
「リハビリの島本先生からお話を伺いました。いずみは織田さんと会ってから、すごく前向きになったそうなんです。今日も会えるのを、とても楽しみにしていました。」
「僕もです……柄にもなく、こんな格好で来てしまってお恥ずかしいです。」
「いいえ、とても素敵です。いずみがさくらちゃんは王子さまなのって、楽しそうに話をしていました。この間お会いした時も、素敵な方だと思いましたけれど、本当にいずみの言う通り王子さまみたいです。」
朔良は微かに微笑んだ。
これまでそんな風に言われても、面映ゆいばかりで嬉しくもなんともなかった。
しかし、小さないずみの役に立ってると聞くと、胸の奥がぽっと温かくなった気がする。
「あの……いずみは、転院して東京で手術をすることになりました。院長先生のご友人でアメリカ在住の脳手術の権威と言われる方が、腫瘍の位置を見て自分なら出来るとおっしゃってくださったんです。」
「そうですか。上手くいくよう祈っています。いつ行かれるんですか?」
「検査もありますし、早い方が良いそうなので、今週末には行く予定です。」
「ずいぶん急なんですね。」
「ええ。いずみに話はしたのですが、ちゃんとわかっているのかどうなのか……」
朔良はいずみが誰よりも自分のことを理解していると伝えたかった。
「いずみちゃんは、まだ小さいから出てくる言葉は子供のものですけど、僕なんかよりはるかにしっかりしています。手術が怖くて泣いてしまったから、ママにもごめんなさいするのって言ってました。」
「病気になってから聞き分けばかり良くなって……あまりいい子になったら、神さまに愛されて死んでしまうような気がして、もっとわがままを言ってもいいと思うんですけど……あ、すみません。」
母親は心の内を零し、肩を震わせて咽んだ。
「実は、僕はこれから理学療法士になろうと思っています。受験もブランクがあるし、簡単にはいかないだろうけどやってみるつもりです。いずみちゃんに、僕が負けないように頑張ると言ってたと、伝えてください。」
「そうなんですか。理学療法士に。それは、あの……島本先生の影響ですか?」
「そんなことは……」
朔良は内心、それだけはないと言い切りたかったが、仕方なく極上の笑顔を向ける事でごまかした。
本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
( *`ω´) 「なんで僕が、あんな奴の影響受けるんだ。冗談じゃないぞ~、ぼけ~、かす~」
(´-ω-`)←そういいたいけど、いずみちゃんのママが相手なので笑ってごまかした朔良。
いずみちゃんは、手術をするみたいです。
うまくいきますように。
(〃゚∇゚〃) 「がんばる~」
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