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朔良―そのままの君でいい 15 

旭日に感じて良いと言われても、朔良は戸惑っていた。
快感に全てを明け渡せない理由が、朔良にはある。

朔良は高校時代、陸上部の部室に連れ込まれ、散々に加虐を受けた。
彼等は朔良が、全身を総毛立たせて震えているのを、面白がって口々に揶揄した。

『嫌だと言いながら、感じているんだろう?朔良姫。』
『なあ、口では抗っていながら、結構こいつ感じているんじゃないのか?』
『見ろよ。女みたいな顔の癖に、ちんこを固くさせてやがる。嫌なら何で拒絶するんだ。ほら、気持ちいいんだろ?』
『その証拠に吐精した……ははっ……体は正直だな。可愛いじゃないか。』

冷酷な薄ら笑いの中で、朔良はどれ程嫌悪しても反応してしまう自分を憎み恥じた。
固く閉じた膝を、島本が身体を入れぐいと割った。
下卑た薄ら笑いを浮かべ……言った。

『……こうされるのが、好きなんだろ?朔良姫。』

ゆっくりと、小橋の大きな手が朔良を追い詰めてゆく。
視界がかすむ……

「好きじゃ……ない。いや……だ。やめ、て。あんたなんか、好きじゃない。や……だ……っ!」
『逃げるなよ、朔良姫。いいな、明日っから放課後、ここに顔を出せ……』
「朔良君?」

不意に渇いた喉に、冷たい液体が注ぎ込まれた。

「いや……あ……っ?」

覚えのある小橋の舌が、朔良を宥めるように唇を浅く割った。
朔良を救う優しい声が耳朶に響く。

「朔良君。目を開けて、僕を見て。僕の声が聞こえる?」
「は……ふ……っ。あ、旭日さん……?」
「ちゃんと僕だけを見つめているんだ、いいね。恥ずかしくても目を閉じちゃ駄目だよ。」
「は……い……」

過去に捕らわれそうになった朔良を救ったのは、求め続けた彩の手ではなく、低い小橋の声だった。

「朔良君を愛しているのは僕だ。誰でもない。今も……これからも、ずっと僕だけだ。」
「旭日さん……」

目に入って来た小橋の身体は、今もプールに併設されているジムで鍛えているせいか、がっしりと締まって、無駄な贅肉はついていなかった。
ふと膝に目をやって、大きな手術の痕を見つけた。思わず手が伸びる。

「痛そう……。」
「傷はでかいが、今は何とも無い。朔良君の足にも傷はある。傷者同士だ。」
「そう言う言い方をすると……僕の母親は人目もはばからず泣きますよ。」
「あ。すまん。同じ印を持っているようで、何だか嬉しくなってしまったんだ。僕もこれまで生きて来て、辛いことはあったけど、前を向く勇気をもって正解だったと思っている。全てを乗り越えたからこそ、朔良君に出会えたと思ってる。だから、これはお互いの勲章だと思う事にしよう。」
「勲章……これが。」
「君のは、聖痕というべきものなのかもしれないね。」

朔良は旭日の優しさを知った。
ベッドに身体を起こし、小橋は朔良の全身を慈愛を持った目で見つめていた。

「なんて……綺麗なんだろうね。男の子に似合わないかもしれないけど、僕には勿体無いような気がするよ。月並みな台詞だけど、会えてよかった。心からそう思うよ……。」

そう言いながら、朔良の肩に顔を埋めた小橋の指は、腋をかすめてそっと朔良の下肢をなぞり最奥へと伸ばされていた。
朔良の身体を巻き取り、優しく言葉を掛けながら、少しずつ拓いてゆく。弛緩するように朔良は小橋の胸で蕩けていた。

「旭日さん。……僕もそう思います。僕は、子供のころから自分の顔が大嫌いだったけど……旭日さんが好きだって言ってくれるなら、このままでもいいのかな……?」
「そのままでいい。朔良君はずっとそのままでいいんだ。傷ついた過去も含めた全部で朔良はできているんだから。」
「旭日さん。僕は……ありのままの僕を愛してくれる人なんていないと、ずっと思ってた。誰もかれも、幼いころから僕を欲しがる人は大勢いたけど、それは絶対に愛ではなかったから。僕を貶めて苦しめるだけのものでしかなかった。僕は旭日さんに会うために生まれて来たと思って良い……?」

欲しかった言葉に浄化されるように、朔良の頬は濡れていた。

「やっと、逢えたね。」

小橋の言葉は朔良の奥津城に届き、清浄な風となった。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

小橋旭日に愛されて、朔良は自分らしく生きることを知るのです……(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚


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