ずっと 君を待っていた・7
「そうだ、青ちゃ~ん、人身御供の役、代わってくんないかな?」
「痛いの嫌いだよぉ~~!」
「いくら何でも、誰もそんなことはしないって。落ち着けって。」
くそぉ・・・タメのくせに頭を撫でるな。
「代わってやりたいけど、こればかりは無理なんだよ・・・」
・・・何で、そんな分かりきった大人みたいなものの言い方するんだよ。
はっきりした話が見えないのが不安で、思い切り落ち込んだぼくは、まんじりとしないまま夜は明け、家族と一緒に車中の人となった。
気分の晴れない、山陰への小旅行。
家族はどこか、よそよそしく無口で、ぼくも黙りこくっていた。
弁当を食うかと親父に聞かれたが、首を振った。
口を開けば、昨夜の話になってしまいそうだった。
頭の中に夕べの親父の真剣な様子と、ガキのころからずっとぼくを悩ませ続ける、「長いもの」が同時に浮かんだ。
ぬめとした光る肌。
割れた舌先がちろちろと、出たり入ったりする口元。
いつもどこからか現れては、じっと俺を見つめていた「長いもの」。
・・・答えが出ない。
「人身御供」だの「巫女」・・・じゃない「依り代」だの言われたって。
でも、どこかで全部がつながっていると、内側で囁く懐かしい声がする。
『ひぃくん・・・』
ぼくをそう呼ぶのは、誰だった・・・?
新幹線から伯備線に乗り換えて行く本家は、コンビニすらない、どえらい田舎にあった。
同じ日本でも、この辺は瓦の色が違う~と、どうでもいい所に感激した。
着いたのは、どこかの神社といってもいいような古めかしい建物だった。
今時分、屋根は古風な桧皮ぶきとか茅葺とかで、歴史の教科書か史跡に出て来るような感じだった。
薪能で使うような、古めかしい年代を感じさせる、足元が苔むした四角い舞台が庭にある。
超、年代物の本家の母屋に入った途端、背中がぞわと寒気に襲われ、肌が泡立って足がすくんだ。
後で考えると、自己防衛本能が危険を察知したのかもしれなかった。
何故、そこで回れ右して帰らなかったのだろう・・・
ぼくの馬鹿。
・・・今更だけど。
常緑の常盤木の吐く、まといつくような湿った空気に包まれ、どこか閑散とした神社の社(やしろ)のような本家の表玄関で声をかける。
いよいよ、本家の当主のお出ましです。
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明日もがんばります。 此花
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