ずっと 君を待っていた・8
「お荷物は、これだけですか?」
一日だけの滞在に、何がいるんだ・・・?
「・・・そうですけど?」
思惑ありげにぼくを見て、含み笑いをした女性の微笑が何だか怖い。
青ざめたその頬に、きっとこの人達は体温低いんだろうな・・・と、ふと思った。
胸に確信が沸いた。
絶対、初対面じゃない気がする・・・どこで、会ったんだった?
「このお部屋で、しばらくお待ちくださいね。」
「お衣装は整えて、こちらにお持ちしますから。」
部屋に誘う女性に、他の家族は違う部屋ですかと聞いたが、返事はもらえなかった。
「衣装ってなんだよ・・・」
小声で一人ごちたら、こちらに顔だけ向けてにっと裂けたように口角が上がった。
割けた舌がのぞくような気がして、思わず視線を外した。
「・・・わ・・・っ。」
・・・あれは、俺の嫌いな、虹彩の細い「長いもの」の目だ。
よく分からないけど、何か、恐ろしい場所に来てしまった気がする。
心拍数が一気にあがり、心臓の音を聞かれたような気がした。
笑顔を見て、全身の産毛が、ぶわとそそけ立つなんて経験は初めてだった・・・。
ぼくは思わず、泡だった二の腕を強くこすった。
青ちゃんと、親父達はどこにいってしまったんだろう。
初めて来た場所で迷子になった子供のように、ぼくは心細さに、ほんの少し強張っていた。
うんと昔に、一度来たことがあるはずだけど何も覚えていなかった。
見渡すと、通された部屋は古めかしいが、十分な広さがある。
昔の人は、みんな小柄だったせいだろうか、思いのほか天井は低い。
172センチのぼく(まだ伸びる予定)が、軽く飛び上がれば、手が届くくらいだ。
天井よりも低く、張り巡らされた太い木の枝が、気になった。
梁にしては太すぎる柱に縦横に、細い梁が格子に組んであって、まるでくもの巣のように見えた。
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