ずっと君を待っていた・13
「いやだ、青ちゃん、助けて。」
そう言おうとしたけど、口から零れ出た言葉は違っていた。
「スサノオさま。ご無事に転生あそばして。お懐かしゅうございます。」
「うん。やっと会えたな、クシナダ。」
青ちゃん・・・何、言ってるの?
ねぇ、今のは、誰に言ったの?
深い深い水の底に、沈められてゆくぼくの意識・・
光るその建物は、何・・・?
水底に、ゆらゆらとさんざめく美しい夢の中の錦の王宮。
このまま捕われてはいけないと思うけれど、その先を知りたいと願ってしまう。
分からないことが多すぎて、その朱塗りの門の向こうに答えがあるような気がした。
・・・遠い昔の記憶が、引きずり出されてくる・・・
深い催眠状態のような、輪郭のぼやけた曖昧な過去。
この記憶は、誰のものなんだろう。
親父の言う人身御供って、ぼくがぼくでなくなるってことなのか・・・?
ぼくは深い記憶の底に見える、王宮の扉に手をかけた。
珊瑚の桃の花の咲き乱れる、海の底の別荘に答えはある。
教えられなくても、この場所も何となく知っているのは何故なんだろう。
風呂場で耳元に聞こえた、とろけそうに甘い「クシナダ」と言う声は、きっとぼくの名前を呼んだんだ。
扉の先の、玉座に君臨する海神の姿に向かい、ぼくは声をかけた。
海の王宮の主、龍神は、長い髪の愛しい人の姿を認めた。
うっとりと虹彩を細め、巨大な龍の姿をシュと人型に変える。
「オロチ。」
王宮の主の、名を呼ぶのは・・・。
龍神が応える。
「クシナダ・・・」
そっと指を絡めるその胸の痛くなるような逢瀬は、決して許されないものだ。
伝説では、クシナダヒメはスサノオと結婚した。
「あぁ・・・オロチ・・・やっと会えた・・・」
「クシナダ、我は終生そなたのものだ。この世の果てまで。」
たくましい腕を伸ばせば、ぬめとした青紫の銀鱗が光を弾き、女は胸に抱かれた。
夢の中でしか許されない、今は会えない愛しい男との、禁忌の逢瀬だった。
「オロチ・・・」
しなだれかかったクシナダヒメは、ぼくの顔をしていた。
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コピーペースト・・・あれ?ワード練習中、前途多難・此花
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