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ずっと君を待っていた・10 

身体を清めた後、本家の御当主登場、めでたく御対面という運びらしいんだけど。

内心、ちょっぴりむかむかしてた。

旅の疲れを、落としてくださいって言うなら分かるけど、この時代に風呂に入って、身体浄めなきゃ会えない御当主って、一体どんなんだよ。
使用人でこの態度だったら、その主人なんて、きっとどこかの王さまみたく、えらそうなのに違いない。
いや、古風だからお殿さまかな。

「ものども、苦しゅうない。佳きに、計らえ。」・・・みたいな。

それにしても、あぁ、桧風呂の木肌は、すごくいい匂い・・・がする。
薬湯なのかな、少し肌に絡みつくような薄緑の温い湯だ。
お肌つるつるになる気がするよ・・・

駄目だ・・・夕べ、寝てないから睡魔が・・・・・・ちょっとだけ、寝てもいいかな・・・。

ん・・・?
ひんやりとしたタオルが心地いい・・・
ちょっとのぼせたかな・・・俺。
尻の下には、固いすのこがある。
気が付いた時には、俺は湯船の外に担ぎ出されていた。

「クシナダ・・・」

誰かが、すごく優しい声で、舐めるように耳元で囁く・・・

「誰・・・?」

誰かの膝に頭を乗せて、湯気でぼうっとした視界に入ったのは、鎌首をもたげた大蛇。
上からじっと、俺の頬に手を添えて、顔を覗き込んでいる。

「ぅうわ~~~っ!!」

咄嗟に逃げ出そうとして、石鹸を踏んだ。
床に叩きつけられるのを、すんでのところで大蛇のそいつに受けとめてもらった。

「何という・・・」

長い髪を束ねて、着物を着た男が上から下までしっとりと湯に濡れていた。
転んだときに洗面器・・・湯桶?に足が入って、中の湯を頭からかぶせてしまったみたいだ。

受けとめてくれた、大蛇・・・違った。

その人は、本家の御当主だそうだ。
挨拶も済ませていないのに、余りに長風呂なので、倒れているんじゃないかと心配してくれたらしい。

・・・鱗に見えたのは、青海波と言う紺地に白を抜いた、着物の柄だった。




いつもお読みいただき、ありがとうございます。
拍手もポチもありがとうございます。日々の、励みになってます。近頃、いろいろとあんぽんたんが、ばれつつある気がします。まずいです。此花
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