SとMのほぐれぬ螺旋・7
BL観潮楼秋企画【SとMのほぐれぬ螺旋・7】
何を馬鹿なこと言ってるんだ・・・と、軽い気持ちで松本の腕を振り払おうとしたが、振りほどけない力で木本は押さえつけられた。
「俺っ、本気ですっ!」
「馬鹿野郎っ・・・!松本、離せって、この馬鹿っ!何を考えてるんだっ!」
「いやだっ!このまま兄貴が役立たずになっちまうくらいなら、俺はこの先兄貴に嫌われても、こうしたほうがいいんだっ!」
「失恋したときは、嘘でもいいから誰か他のやつを抱けば忘れられるって、以前言ってたじゃないですか。」
どっとソファから床に転がり落ちて、したたかに背中を打った。
「つっ!」
木本の目に、必死の松本の顔が映る。
「松本・・・」
いつも金魚の糞のようにして、慕ってくる可愛いやつだった。
弟分としてそばで面倒見てやってくれといって、自分のところに連れてこられたときには、荒涼とすさんだ目をしていた。
いろいろなものに裏切られ、親に見捨てられて行き場がなくなったのを木庭組の先代が拾ったという話だった。
若い松本に体重をかけられ、大型犬に押し倒されているような気がする。
最近まともに、食事をしていなかったから押し返そうにも体に力が入らなかった。
あっという間に、足を割られ支配者の顔になった松本が、どこか苦しそうに顔をゆがめた。
「やっぱ、無理だ・・・おれ・・・。すみません、すみません、木本さん。」
「・・・何だ、おまえ。俺のことがそんなに好きだったのか?手篭めにしようなんざ、いい度胸しているじゃねーか。」
いたずらっぽく片目を瞑ったら、松本が押さえ込んでいた肩口にどっと落ちてきた。
「本当は、そんなじゃないです・・・っ。店のみんな、兄貴のことを心配してるんです。」
「・・・みんな、兄貴みたいになりたいってがんばってるのにっ。腑抜けになったなんて他所のやつらに悪口言われて、悔しくて・・・っ。すみません。」
松本が木本を慕っているのは、周囲にいる誰もが認めるところだった。
色恋ではなく、人として本気で兄貴に惚れているんだと豪語して、役に立とうと懸命に働いていた。
もし、本当に弟がいるのならこんな感じだろうかと、思ったこともある。
高校中退の松本は、確かにそろばん勘定は木本ほど達者とはいえなかったが、文字通り身体で仕事を覚えるというタイプだった。
自分のために何とかしようと思いつめたあまり、胸で嗚咽する弟分の背中を、ぽんぽんと叩いた。
木本の中で、何かが吹っ切れた。
「心配させて悪かったな、松本。ちょっと自分を見失っていただけだ。これから、ばしっと気合入れるからな。」
・・・その時、携帯電話が短く鳴った。
「あ、電話が鳴ってます、兄貴。」
「大した用じゃないだろ。それより次のショーの段取りを教えてくれ。仕切り直しだ。前回の顧客名簿もついでにな。」
「はいっ!!」
松本が喜んで跳ね上がって、駆けてゆく。
両手で顔をぱんと張って気合を入れた木本の頬はやつれて、どこか痛々しかったが目に力は宿っていて松本を安心させた。
だが、その時電話を見なかったことを木本は後で後悔することになる。
短く一回鳴って切れた電話の相手は、木本の最愛の樋渡蒼太からだった。
「やっぱ、テクが無くて無理だ・・・おれ・・・。すみません、すみません、読者さま。」
・゜゜・(/□\*)・゜゜・此花、逃亡~~~~・・・・ ←やっぱりね。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
拍手もポチもうれしいです。
ランキングに参加していますので、どうぞよろしくお願いします。 此花←言うことは言う・・・みたいな。
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こちらで使用させていただいている美麗挿絵(イラスト)は、BL観潮楼さま・秋企画参加のみのフリー絵です、それ以外の持ち出しは厳禁となっております。著作権は各絵師様に所属します。
木本さんのイメージは、カロリーハーフchobonさんの素敵おじさま祭りからお借りしています。連載間、お借りいたします。秘かに愛に溢れている不器用さんの設定です。
押し倒した松本に思わず「がんばれ~!」・・・むしろ、がんばれ自分。
何を馬鹿なこと言ってるんだ・・・と、軽い気持ちで松本の腕を振り払おうとしたが、振りほどけない力で木本は押さえつけられた。
「俺っ、本気ですっ!」
「馬鹿野郎っ・・・!松本、離せって、この馬鹿っ!何を考えてるんだっ!」
「いやだっ!このまま兄貴が役立たずになっちまうくらいなら、俺はこの先兄貴に嫌われても、こうしたほうがいいんだっ!」
「失恋したときは、嘘でもいいから誰か他のやつを抱けば忘れられるって、以前言ってたじゃないですか。」
どっとソファから床に転がり落ちて、したたかに背中を打った。
「つっ!」
木本の目に、必死の松本の顔が映る。
「松本・・・」
いつも金魚の糞のようにして、慕ってくる可愛いやつだった。
弟分としてそばで面倒見てやってくれといって、自分のところに連れてこられたときには、荒涼とすさんだ目をしていた。
いろいろなものに裏切られ、親に見捨てられて行き場がなくなったのを木庭組の先代が拾ったという話だった。
若い松本に体重をかけられ、大型犬に押し倒されているような気がする。
最近まともに、食事をしていなかったから押し返そうにも体に力が入らなかった。
あっという間に、足を割られ支配者の顔になった松本が、どこか苦しそうに顔をゆがめた。
「やっぱ、無理だ・・・おれ・・・。すみません、すみません、木本さん。」
「・・・何だ、おまえ。俺のことがそんなに好きだったのか?手篭めにしようなんざ、いい度胸しているじゃねーか。」
いたずらっぽく片目を瞑ったら、松本が押さえ込んでいた肩口にどっと落ちてきた。
「本当は、そんなじゃないです・・・っ。店のみんな、兄貴のことを心配してるんです。」
「・・・みんな、兄貴みたいになりたいってがんばってるのにっ。腑抜けになったなんて他所のやつらに悪口言われて、悔しくて・・・っ。すみません。」
松本が木本を慕っているのは、周囲にいる誰もが認めるところだった。
色恋ではなく、人として本気で兄貴に惚れているんだと豪語して、役に立とうと懸命に働いていた。
もし、本当に弟がいるのならこんな感じだろうかと、思ったこともある。
高校中退の松本は、確かにそろばん勘定は木本ほど達者とはいえなかったが、文字通り身体で仕事を覚えるというタイプだった。
自分のために何とかしようと思いつめたあまり、胸で嗚咽する弟分の背中を、ぽんぽんと叩いた。
木本の中で、何かが吹っ切れた。
「心配させて悪かったな、松本。ちょっと自分を見失っていただけだ。これから、ばしっと気合入れるからな。」
・・・その時、携帯電話が短く鳴った。
「あ、電話が鳴ってます、兄貴。」
「大した用じゃないだろ。それより次のショーの段取りを教えてくれ。仕切り直しだ。前回の顧客名簿もついでにな。」
「はいっ!!」
松本が喜んで跳ね上がって、駆けてゆく。
両手で顔をぱんと張って気合を入れた木本の頬はやつれて、どこか痛々しかったが目に力は宿っていて松本を安心させた。
だが、その時電話を見なかったことを木本は後で後悔することになる。
短く一回鳴って切れた電話の相手は、木本の最愛の樋渡蒼太からだった。
「やっぱ、テクが無くて無理だ・・・おれ・・・。すみません、すみません、読者さま。」
・゜゜・(/□\*)・゜゜・此花、逃亡~~~~・・・・ ←やっぱりね。
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押し倒した松本に思わず「がんばれ~!」・・・むしろ、がんばれ自分。
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