SとMのほぐれぬ螺旋・10
その後も隼は、生徒会長、樋渡蒼太のことが気になって仕方が無い風だった。
「周二くん。あのね、気のせいだったらいいんだけど、会長ね、熱っぽかった気がするの。」
「咳も時々していたし。」
「まあ、あの勢いで木本に連絡入れるだろうから、面倒見るだろう。それより・・・なぁ、隼。」
夕日の入る元、視聴覚室で周二は隼を膝に乗せた。
「黙ってれば、ぜってぇくそ親父には分からないって。だからさ、ちょっとだけ「ご挨拶」・・・な?」
「だめです。純愛だもん・・・。」
制服のズボンを奪われた隼が、腕の中で緩く抗った。
「あれ。おまえ・・・前に木本に貰ったレースのひもパン、はいてんの?」
「だって、このぱんつ周二くんが可愛いって言ったから。キンタマーニじゃなくなっても、好きかなって思って。」
キンタマーニの意味は相変わらず分からなかったが、周二は大きく肯いた。
「好きだぜ。めっちゃ可愛いし、超似合う~。・・・というか、もう毎日ずっとそれでいろ。」
「一枚しかないもの・・・毎日は無理だよ。」
「じゃあさ。これから買いに行こう。今すぐにっ!ぱんつくらいなら、小遣いでいっぱい買えるだろ。」
「だって文化祭の決算書、提出期限あるんだよっ。」
「俺の辛抱にも、限度があるんだよっ。」
「でもっ。」
「デモは、隣の国に任せておけって。」
試着はどうするんだという話は、さておき・・・
結局、隼は周二と買い物に出かけ、蒼太の熱の話は何処かに行ってしまった。
その頃。
少しふらついた蒼太は、おかしいな、足元がふわふわする・・・と思いつつ何とか自宅に帰ってきていた。
自宅といっても、現職大臣を務める親元を離れての一人暮らしで、通いの家政婦が週に三回食事を作りに来る高級マンション暮らしだった。
潔癖症の蒼太は、家事もほとんどすべて自分でこなす。
帰宅したらまず、洗濯機を回し掃除機をかけた。
「・・・何だか、ぼうっとする・・・」
制服を脱いで、シャツを洗濯機に放り込みベランダに出ようとして、目が回った。
不意に背筋をぞわと悪寒が走り、まずいと思って体温計を使うと39度2分もある。
急いで、市販の風邪薬を飲もうとしたが、見当たらない。
がたがたと、急速に上がる熱の震えに襲われ、歯の根が合わずかちかちと走った。
外国暮らしが長かった蒼太は、これまで周囲がそうしてきたように、熱を一気に下げるために水シャワーで冷やすことにした。
部屋を暖め、薬を準備してこそ効果もあっただろうが、日ごろの健康を過信していた。
この一週間というもの、蒼太は木本とのことであれこれ思い悩んで、まともに食事すら取っていなかった。
通いの家政婦の作る食事も、申し訳ないと思いながらトイレに流し、ゼリードリンクだけで済ましていた。
シャワーを浴びガウンをひっかけて居間に入った瞬間、蒼太の弱った身体は思わぬ高熱に対処できず倒れた。
ベランダは開け放たれて、涼しくなった秋風に、蒼太はこのまま何時間も晒されることになる。
心労がたたって、蒼太くんが倒れてしまいました。
最愛の木本さんは、どうしているのでしょう・・・
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(pioさま鼻血ぷぷっの美麗イラストお借りいたしました。ありがとうございました。久しぶりなので、どこか新鮮です。
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