ずっと君を待っていた・35
次の日早く、到着した日の服装で、俺は海鎚家御当主、緋色に頭を下げた。
「お世話になりました。」
「うん。」
頷いて、ほんの少し相好を崩した緋色に・・・
「何か、お日様の下にいるの、めっちゃ似あいませんね~。」と、言ってしまい、ぼくは親父と青ちゃんに同時に蹴りを入れられた。
「無礼者っ!」
胃を押さえてうずくまったぼくの姿に、青白い顔を向けた海鎚緋色は、意外なほど優しい笑みを浮かべていた。
表に車が着ましたよと、家人が呼びに来た隙に、ぼくは「ちょっと待ってて!」と、声をかけ、海鎚緋色を玄関先に引っ張り込んだ。
「ね。本当にこれでよかったの?」
いつ会えるかも分からないなら、聞いておかなければ。
「鏡が割れてしまったら、神楽も出来ないし、これから先はどうなるんだ?」
御当主はちょっと驚いていた。
「え?」
関わりがなくなって、ぼくが心底安堵して帰宅するんだと思っていたらしい。
・・・言っておくけど、そんな薄情者じゃないぞ。
「ここの神楽は、手っ取り早く言えば、約束の確認のために行っていた神事だったんだ。」
「そなたが・・・思いがけず割ってしまったが、案じなくとも、ちゃんと我とクシナダは再び永久(とわ)を誓い約束を交わした。」
それって、約束が果たせたってことなのか?とぼくは、問うた。
「クシナダが、こういう姿で現れるとは思いもよらなかったが、これまで待ったんだ。」
「後、千年でも待つさ。」
予想通りの答えに、思わずここに来てからずっと思っていたことを口にしてしまった。
「あのさ・・・ぼく、男に生まれてきて、ごめんね。」
海鎚緋色は、それを聞くなりくしゃと破顔した。
「いや・・・それはそれで、楽しめた。」
なんだよ、それ。
ついと、手が伸びて顎を引き寄せようとする。
「クシナダ・・・我はいっそ、何も知らぬ無垢な赤子のようなそなたを、我が物に・・・」
うわ~~っ!!
やっぱり・・・こうなる・・・?
玄関の内側で、何度目かの深いキスを交わし、何度目かの酸欠状態になり、ぼくはめまいを起こし酸素を求めて喘いだ。
こ、腰が砕けそう・・・
「だめっ・・・、これ以上は、だめっ!無理っ!」
玄関先から飛び出たぼくと、笑い転げる海鎚家御当主を始めて見た周囲は、信じられない風で、驚愕の眼差しを向けてきた。
オロチは・・・その時の海槌緋色はすごく楽しそうに笑っていて、それは何故だかぼくには涙がこぼれそうなくらい嬉しかったんだ。
********************************************
いつもお読みいただきありがとうございます。
拍手もポチも、励みになっています。
後、一話になりました。
明日も、がんばります。 此花
「お世話になりました。」
「うん。」
頷いて、ほんの少し相好を崩した緋色に・・・
「何か、お日様の下にいるの、めっちゃ似あいませんね~。」と、言ってしまい、ぼくは親父と青ちゃんに同時に蹴りを入れられた。
「無礼者っ!」
胃を押さえてうずくまったぼくの姿に、青白い顔を向けた海鎚緋色は、意外なほど優しい笑みを浮かべていた。
表に車が着ましたよと、家人が呼びに来た隙に、ぼくは「ちょっと待ってて!」と、声をかけ、海鎚緋色を玄関先に引っ張り込んだ。
「ね。本当にこれでよかったの?」
いつ会えるかも分からないなら、聞いておかなければ。
「鏡が割れてしまったら、神楽も出来ないし、これから先はどうなるんだ?」
御当主はちょっと驚いていた。
「え?」
関わりがなくなって、ぼくが心底安堵して帰宅するんだと思っていたらしい。
・・・言っておくけど、そんな薄情者じゃないぞ。
「ここの神楽は、手っ取り早く言えば、約束の確認のために行っていた神事だったんだ。」
「そなたが・・・思いがけず割ってしまったが、案じなくとも、ちゃんと我とクシナダは再び永久(とわ)を誓い約束を交わした。」
それって、約束が果たせたってことなのか?とぼくは、問うた。
「クシナダが、こういう姿で現れるとは思いもよらなかったが、これまで待ったんだ。」
「後、千年でも待つさ。」
予想通りの答えに、思わずここに来てからずっと思っていたことを口にしてしまった。
「あのさ・・・ぼく、男に生まれてきて、ごめんね。」
海鎚緋色は、それを聞くなりくしゃと破顔した。
「いや・・・それはそれで、楽しめた。」
なんだよ、それ。
ついと、手が伸びて顎を引き寄せようとする。
「クシナダ・・・我はいっそ、何も知らぬ無垢な赤子のようなそなたを、我が物に・・・」
うわ~~っ!!
やっぱり・・・こうなる・・・?
玄関の内側で、何度目かの深いキスを交わし、何度目かの酸欠状態になり、ぼくはめまいを起こし酸素を求めて喘いだ。
こ、腰が砕けそう・・・
「だめっ・・・、これ以上は、だめっ!無理っ!」
玄関先から飛び出たぼくと、笑い転げる海鎚家御当主を始めて見た周囲は、信じられない風で、驚愕の眼差しを向けてきた。
オロチは・・・その時の海槌緋色はすごく楽しそうに笑っていて、それは何故だかぼくには涙がこぼれそうなくらい嬉しかったんだ。
********************************************
いつもお読みいただきありがとうございます。
拍手もポチも、励みになっています。
後、一話になりました。
明日も、がんばります。 此花
- 関連記事
-
- ずっと君を待っていた【あとがき】 (2010/11/25)
- ずっと君を待っていた・36(最終話) (2010/11/25)
- ずっと君を待っていた・35 (2010/11/24)
- ずっと君を待っていた・34 (2010/11/23)
- ずっと君を待っていた・33 (2010/11/22)
- ずっと君を待っていた・32 (2010/11/21)
- ずっと君を待っていた・31 (2010/11/20)
- ずっと君を待っていた・30 (2010/11/19)
- ずっと君を待っていた・29 (2010/11/18)
- ずっと君を待っていた・28 (2010/11/17)
- ずっと君を待っていた・27 (2010/11/16)
- ずっと君を待っていた・26 (2010/11/15)
- ずっと君を待っていた・25 (2010/11/14)
- ずっと君を待っていた・24 (2010/11/13)
- ずっと君を待っていた・23 (2010/11/12)