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禎克君の恋人 2 

自転車で風を切る。

通いなれた道の反対側の坂の上には、温泉施設付きのホテルがある。
周囲はもう忘れていると思っているようだが、幼稚園の頃の出来事を、禎克は薄く覚えていた。
勿論、余りにちびだったので、詳しいことは忘れてしまったが、当時貰った卓上カレンダーと、その時に仲良しだった(らしい)友人と、並んで写した色の変わったポラロイド写真を大切に持っていた。今、どうしているんだろうかとか、どこにいるのだろうかと、口にして問うたことはないが、通学途中でホテルの場所を示す看板を見るたび、すっかりぼやけた友人の輪郭を思い起こしていた。
今でもホテルでは、禎克の知らない大衆演劇の興行が、時々行われているらしい。

「あの子、なんていう名前だっけ……。忘れちゃったな。」

少しは覚えていることもある。
何度も独りでホテルまで歩いて行ってみたが、会いたい友達に二度と会えることはなかった切ない記憶だ。
夕暮れの帰り道、幼稚園の禎克は涙を拭きながら歩き、いつしか世の中にはどうにもならないことが有るのだと知り、初めて何かを諦めた。
すごく悲しかった別れは時間が癒し、日々の生活の中では新しい友達ができ、夢中になれるものが見つかって、幼稚園の頃の出会いは、全て遠い過去のものになってゆく。

ただ心の深いところで、紅いお振袖の子が今も自分の名を呼び涙ぐんでいるのを、禎克は知っていた。

「さあちゃ~ん……」

その子は、禎克のことをそう呼んでいた。

*****

禎克の通う高校には、運動部専用の宿泊施設がある。間もなくインターハイ予選が始まるため、バスケ部は毎年、事前に一週間の戦略合宿を組む。禎克には、高校生になって初めて経験する合宿だった。

「金剛!早いな。」

「あ、上谷先輩。おはようございます!」

「よく眠れてるか?」

「大丈夫っす。先輩は膝の調子はどうですか?」

「なんとかな。インターハイまで持ってくれればいいんだけどな。」

「行きましょうね、全国。先輩と行きたいっす。」

「おうっ!お前のキラーパス、頼りにしてるからな。」

明るい顔を向けるのは一つ上の、上谷彩(かみやひかる)。精度の良い3P(ポイント)シューターだ。
中学の頃からバスケ雑誌に写真が載ったりして、ちょっとした有名人だった禎克には、入学時分、上級生もどこか距離を置いてよそよそしかったが上谷だけは違っていた。
初対面の時から禎克の入部をすごく喜んでくれた。むしろ余りに親しげなので面喰い、何か意図があるのかと腹を探ったくらいだ。




すっかり過去の事になってしまっている大二郎くんの記憶。
大二郎くんの中で、さあちゃんはどんな存在になっているのかな。

それにしても……(*´・ω・)(・ω・`*)ネー……どこが、BLやねん……。

|゚∀゚) えっと、いずれ、ちょっぴり……うっすらがんばります。

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