禎克君の恋人 1
金剛禎克、柏木大二郎、離れ離れになったまま、共に16歳になっていた。
偶然の再会なんてものは、ドラマの中だけだと思っていた。
******
どこにでもあるような、繰り返される朝の風景だった。
「ほら、さあちゃん。急がないと、合宿に遅れちゃうわよ。」
「うん。大丈夫~。」
「寝癖付いてるわよ。」
「こういう髪型なんだよ。」
さあちゃんこと金剛禎克は、高校生になっている。
ずいぶんと、身長が伸びた。
小学校5年生からスポーツ少年団に入って、ミニ・バスケットボールを始めた。どうやらバスケットボールと相性が良かったらしく、指導者にも恵まれてスポーツに力を入れているエスカレーター式の私立高校にスポーツ優待生として推薦された。今はインターハイ出場を目指して頑張っているところだ。
「あら、さあちゃん。また背が伸びたんじゃないの?」
母は、何度目かの同じ台詞を口にした。
寝ていると夜中に骨がきしむ気がするほど成長期に身長が伸びて、中学校を卒業するころには禎克の身長は180センチに近かった。ちびの頃を知っている者は、大抵会うたびに目を瞠る。それほど伸びていた。
「そうかな。あ~、関節痛い……。」
背伸びをするその声も、すでに変声して低くなっている。
小さなころは女の子のようだった禎克も、今は異性から熱い視線を投げかけられる、涼やかな面差しの少年になっていた。激しい運動のたまもので、厚みの無い華奢な体躯には、程よく筋肉も乗っている。本人はまるで気付いていないが、禎克は今も人目を引く少年だった。
姉の湊も相変わらずだ。
「さあちゃん。あんた、この前渡した手紙の返事は?」
「湊。ああいうの迷惑だから、次からは適当に断っておいて。」
「はぁ!?それが返事?」
「だって、誰かに返事書いて、誰かには書かないってわけにはいかないだろう?いちいち返事なんてしていられないよ。」
「うまい言い訳ね~。」
話し方は、ずっと変わらない姉の湊くんも、今は見かけだけは母譲りの美貌ですっかり女性らしく見える。口さえ開かなければ、かなりの美人なのだが、演劇など始めたせいか、とにかく派手で目立つ。いつかは舞台女優になる夢を持っていた。
女子高では黄色い声が飛び交い、憧憬を込めて下級生からは「湊おねえさま」と呼ばれていた。本人もそういうのはまんざらではないらしい。
「女の子には無理してでも少しは優しくしなさいって、いつも言ってるでしょう?せっかく、一生懸命書いてくれたのに。見た目だけは良いのにあんたって、中身は相変わらずへたれのままね。」
「今は、バスケにしか興味ないんだよ。正直、女の子なんて面倒くさいよ。うっかり付き合ったら、大変だって先輩も言ってるもん。」
「この薄情もの!嘘でもいいから女の子には優しくしなさいよ。」
「ははっ。そっちは湊の方が得意だろ。インターハイ終わるまでは、それどころじゃないの。強豪校ばっかりで地区予選勝ちぬく方が、インターハイで活躍するより大変なんだからね。応援だけはありがとうって言っといて。じゃ、行ってきます~。」
「がんばってね~!」
「お~っ!」
禎克は、合宿用のぱんぱんに膨らんだデイパックを、ぶんと振った。
本日もお読みいただきありがとうございます。
まだちょっと早いかな~と思いながら、ついに高校生になりました。
早く会わせてあげたいなと思います。(`・ω・´)←でもこのちん、どうやら極悪非道らしいぞ……うふふ。
(`・ω・´)禎克 「バスケはじめたら、めっちゃ身長伸びました。」
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偶然の再会なんてものは、ドラマの中だけだと思っていた。
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どこにでもあるような、繰り返される朝の風景だった。
「ほら、さあちゃん。急がないと、合宿に遅れちゃうわよ。」
「うん。大丈夫~。」
「寝癖付いてるわよ。」
「こういう髪型なんだよ。」
さあちゃんこと金剛禎克は、高校生になっている。
ずいぶんと、身長が伸びた。
小学校5年生からスポーツ少年団に入って、ミニ・バスケットボールを始めた。どうやらバスケットボールと相性が良かったらしく、指導者にも恵まれてスポーツに力を入れているエスカレーター式の私立高校にスポーツ優待生として推薦された。今はインターハイ出場を目指して頑張っているところだ。
「あら、さあちゃん。また背が伸びたんじゃないの?」
母は、何度目かの同じ台詞を口にした。
寝ていると夜中に骨がきしむ気がするほど成長期に身長が伸びて、中学校を卒業するころには禎克の身長は180センチに近かった。ちびの頃を知っている者は、大抵会うたびに目を瞠る。それほど伸びていた。
「そうかな。あ~、関節痛い……。」
背伸びをするその声も、すでに変声して低くなっている。
小さなころは女の子のようだった禎克も、今は異性から熱い視線を投げかけられる、涼やかな面差しの少年になっていた。激しい運動のたまもので、厚みの無い華奢な体躯には、程よく筋肉も乗っている。本人はまるで気付いていないが、禎克は今も人目を引く少年だった。
姉の湊も相変わらずだ。
「さあちゃん。あんた、この前渡した手紙の返事は?」
「湊。ああいうの迷惑だから、次からは適当に断っておいて。」
「はぁ!?それが返事?」
「だって、誰かに返事書いて、誰かには書かないってわけにはいかないだろう?いちいち返事なんてしていられないよ。」
「うまい言い訳ね~。」
話し方は、ずっと変わらない姉の湊くんも、今は見かけだけは母譲りの美貌ですっかり女性らしく見える。口さえ開かなければ、かなりの美人なのだが、演劇など始めたせいか、とにかく派手で目立つ。いつかは舞台女優になる夢を持っていた。
女子高では黄色い声が飛び交い、憧憬を込めて下級生からは「湊おねえさま」と呼ばれていた。本人もそういうのはまんざらではないらしい。
「女の子には無理してでも少しは優しくしなさいって、いつも言ってるでしょう?せっかく、一生懸命書いてくれたのに。見た目だけは良いのにあんたって、中身は相変わらずへたれのままね。」
「今は、バスケにしか興味ないんだよ。正直、女の子なんて面倒くさいよ。うっかり付き合ったら、大変だって先輩も言ってるもん。」
「この薄情もの!嘘でもいいから女の子には優しくしなさいよ。」
「ははっ。そっちは湊の方が得意だろ。インターハイ終わるまでは、それどころじゃないの。強豪校ばっかりで地区予選勝ちぬく方が、インターハイで活躍するより大変なんだからね。応援だけはありがとうって言っといて。じゃ、行ってきます~。」
「がんばってね~!」
「お~っ!」
禎克は、合宿用のぱんぱんに膨らんだデイパックを、ぶんと振った。
本日もお読みいただきありがとうございます。
まだちょっと早いかな~と思いながら、ついに高校生になりました。
早く会わせてあげたいなと思います。(`・ω・´)←でもこのちん、どうやら極悪非道らしいぞ……うふふ。
(`・ω・´)禎克 「バスケはじめたら、めっちゃ身長伸びました。」
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