流れる雲の果て……7
泣きながら乱暴に、美千緒のシャツを裂いた。
「あっ。だ、大ちゃんっ。待って。」
「やだっ。おれは美千緒さんが好きなのに、美千緒さんはおれの前から消える事しか考えてない。美千緒さんがおれから離れるって言うのなら、絶対離れられないようにする。おれ、美千緒さんの恋人になる。絶対、忘れられないようにする。美千緒さんを苦しめる人を、心の中から追い出すっ。」
一途な大二郎の思いは激しく、とうに忘れたはずの美千緒の劣情に火が点く。忘れるために全てを捨てて流れて来たのに、どうあっても忘れられない面影があった。
*****
艶めいた微笑みを浮かべた美千緒は、そっと優しく大二郎の頭を抱いた。
「大ちゃん。ありがとう。ぼくを、必要としてくれて……。」
「え……。」
「ぼくで良いなら、愛する方法を教えてあげるよ。大ちゃんはぼくでいいの?」
大二郎は思わず、必死に頷いた。
「おれっ、美千緒さんが良い。美千緒さんに傍に居て欲しい。おれだって、劇団の中で大勢いる中で、いつだってひとりなんだもの。寂しいのは美千緒さんと一緒だよ。」
「大ちゃん。」
いつも明るい大二郎の、それは痛ましい本音の吐露だった。抱えてきた孤独を、誰にも打ち明けたことの無い大二郎が涙を拭いた。
「みんなおれに優しくしてくれるけど、それはお師匠さんの息子だからで、ただの柏木大二郎を認めてくれているわけじゃない。他の座員の子供もいるけど、みんな何かあったら親の所に行くんだ。……おれだけ、いつだって一人だもの。うんとちびの頃から、お師匠さんの事、お父さんって呼んだこともない。参観日や運動会なんて、一人のお弁当で寂しいだけだったよ。」
寂しいと全身で訴える大二郎に手を伸ばし、美千緒は力を込めた。
心に風の吹く者同士、舐めあうような愛が有ってもいいのではないか、そう思った。
*****
美千緒はゆっくりとシャツを脱いだ。
あばら骨の浮く薄い胸を、大二郎はじっと見ていた。まろみの何もない、青ざめた骨ばった身体だった。
「あんまり見ないでくれるかな。貧相でみっともないから……。」
「美千緒さん。あのね、おれの好きな初恋のさあちゃんも、男なんだ。おれね、時々さあちゃんの事、頭の中で抱くんだよ。方法がわからなくて、ぎゅっと抱きしめるだけなんだけど、おれのちんこは固くなってきびしくなるの。美千緒さん、ほんとに、おれ……でもいい?」
「いいよ。おいで。教えてあげる。」
美千緒は大二郎を引き寄せると、初めて唇を重ねた。薄い二枚貝を割って、口腔を翻弄した後、あちこちに滑るように唇を落としてゆく。
「あ……っ。あ……。」
びくびくとその都度、慄く大二郎は、魚のように跳ねた。
「可愛い大ちゃん。大ちゃんは、ぼくを抱きたい……?それとも、ぼくに愛されたい?したいようにしてあげるよ。」
「どうしたいのか、自分でもよくわかんない。だけど、美千緒さんが好きだ。」
膝を割って伸ばされた腕に、おずおずとセクスが反応してゆっくりと腰が前後に揺れる。じっと見つめる美千緒の視線が熱を持っていた。見つめられるだけで、下肢が熱を持つ。
まだ幼い容の名残を残したそこに、長い指が触れる。上下に鳥の羽根で撫でられるようになぶられて、やがて下肢の力が抜けて行った。
「美千緒さん……。美千緒さん。」
大二郎は、ただ名前だけを繰り返して美千緒の名を呼んだ。
(*/д\*) ……じ、時間がかかりました~。
この描写に、もう少しかかりそうです。
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