夜の虹 14
好きになった相手が月虹でなければ、清介は恋人と映画を見たり食事に行ったり、二人だけの記念日には小旅行などもして、楽しい学校生活を送っていたはずだった。
清介は思い悩んだ末に、月虹に想いを寄せたまま傍にいるのが辛く、逃げ道を探した。
父の急な海外赴任にかこつけて、転校する道を選んだのは、好きだからこそ平気で他の者になる月虹を傍で見て居たくなかったからだった。
月虹はそんな清介を詰った。
「なぁ……清介が一人でこっちに残るってのは無理なのか?どうしても向こうに転校しちゃうの?おれはお前が傍に居なくなるのは寂しいぞ。寮だってあるんだから、こっちに残れよ。何なら、おれのマンションに来たっていい。部屋ならいくつもあるんだし。」
「う……ん。ぼくも寂しいけど……。家族は、できるだけ一緒にいる方が自然だって思うんだ。」
「恋人同士も一緒にいる方が、自然じゃないのか?」
「……いっぱい手紙書くね。」
「清介のバカ。もう、いいよ。シンガポールでもバンコクでもどこでも行っちゃえ。」
「月虹……ごめんね。」
ふくれっ面をする月虹が妾腹で、家族の温もりがないのは清介も知っていた。母親の話も聞いたことがなかった。通いの家政婦と執事が面倒を見てくれるだけで、マンションに帰っても傍に誰もいない月虹が、セクスの時だけ求める人肌を愛情の全てだと思ったとしても、誰に責めたりできるだろう。
恋人同士だと清介に言いながら、月虹は手あたりしだい目の前で相手を抱く。
見つめる清介は、華やかな揚羽のように蜜を求めて舞う恋人を失うのが怖くて、止めてくれ、自分だけを愛して傍にいてくれと口に出せなかった。
「ぼくだけの月虹でいて。こんなの恋人同士なんて言えないよ。」
そう口に出してしまえば、全てが終わってしまうような気がする。
本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
大切なことは、なかなか言えないのです。(´・ω・`) 言えたら、苦労しないよね。
そして、清介と月虹の恋は…… ……
- 関連記事
-
- 夜の虹 19 【最終話】 (2013/04/29)
- 夜の虹 18 (2013/04/28)
- 夜の虹 17 (2013/04/27)
- 夜の虹 16 (2013/04/26)
- 夜の虹 15 (2013/04/25)
- 夜の虹 14 (2013/04/24)
- 夜の虹 13 (2013/04/23)
- 夜の虹 12 (2013/04/22)
- 夜の虹 11 (2013/04/21)
- 夜の虹 10 (2013/04/20)
- 夜の虹 9 (2013/04/19)
- 夜の虹 8 (2013/04/18)
- 夜の虹 7 (2013/04/17)
- 夜の虹 6 (2013/04/16)
- 夜の虹 5 (2013/04/15)