夜の虹 18
ひくひくと痙攣するように、耐えて身震いをする涼介のペニスをつつくと、月虹は何の躊躇も(ためらいも)なく口を付けた。腹を打つ涼介の持ち物は、張りつめて露を頂き零れそうになっている。今にも爆ぜそうで、涼介は泣きそうな顔を向けた。
「だ……め。駄目です、兄貴。そんなことしちゃ……あうっ……うっ。」
「流れちまえって、言ってるだろ。気持好いって、鳴いて見ろ、涼介。」
「いやだ、そんな女みたいなこと……い、言えないっ……ああっ……」
涼介も月虹の所に来てから、何度か月虹に促されて女を抱いたことはある。中には手練れの商売女もいたが、その時にされた口淫とは何かが違っていた。的確に涼介の急所を掴み、脳髄の奥で短い閃光が走る気がする。するりと挿入されて後孔でうごめく月虹の指に、いつか女を抱いていた時にバイブの様に小刻みに忙しなく動いていたのを思い出した。
「兄貴、おれ、おれ……女じゃないっす……そこが女の代わりなんて……そんな抱き方、いゃだ……っ!」
「わかってるよ。おれは、女を抱いてるんじゃない、ちゃんと男だってわかって涼介を抱いてんだ。いいか、間違えるなよ。スケコマシの時だろうがゲイホストの時だろうが、おれはいつでも誰でもいいから抱こうなんて思っていない。今だっておれは、本気で涼介を欲しいと思って抱いてるんだ。」
「……兄貴。」
涼介は蕩けた下肢に月虹が宛がっているものが、自分が欲しかったものだと気が付いていなかった。手慣れた指が抜き差しされる度、いつか下半身がずくずくと弛緩して、得体の知れない甘い痺れに包まれていく。零された温い液体が下肢にまとわりつき、涼介は月虹の手管に翻弄されていた。
「ああ……っ。あっ……あっ。」
「ここだろ。おまえの感じるところ。」
「うあっ……あっ。」
深く侵入してきた月虹の雄芯が、身体の奥にある涼介の快感の場所を根こそぎえぐってゆく。自分の物ではない声帯を使ってありえない声が、いつか聞いた雌猫の小さな悲鳴になって部屋に響いていた。
深く突き入れられるたびに、涼介は知らず甘い叫びをあげていた。抱えた膝は、指の跡が付いて白くなっている。飛びそうになる意識の隅で、自分が月虹を咥えこんで引き絞るのを感じていた。
「兄貴……もっと……もっと奥に……あぁっ……」
胸を合わせてただ月虹を感じていたかった、それだけのために涼介は知らないうちに蕩ける肉壷になっていた。
ぱんと、強く腰を打ち付ける音が響き、月虹が最奥に放ったのと、涼介の意識が奔流に押し流されたのは同時だった。
*****
「参ったなぁ……おまえ、とんだ名器じゃねぇか。つっ……やりすぎて、傷口開いちまったかな。」
ぐったりと気をやって弛緩した涼介に、ねぎらいの口づけを一つ贈った月虹に、倒れ込んだ涼介は気が付いて腕を回した。
「兄貴……」
月虹を残し死んだ清介を、哀れだと思う。
泡沫の恋人を抱きしめて、今はない清介に今生でのつながりを詫びた。いつかはこの暖かい手を、彼岸の恋人に譲り渡すのだとしても、今だけは自分のものだと思っていたかった。
「月虹の兄貴……」と、涼介は掠れた声で愛しい人を呼んだ。
「おれ……ずっと、こうしたかった。兄貴と、ずっと……こうなりたかった。」
「やっと、言ったな。意気地なし。」
煌々と冴える月光に照らされた、しなやかな青年が涼介に向かって口角をあげた。
失った初恋の清介と同じ寂しい目をした涼介が、今は満ち足りて微笑んでいるのにどこか安堵していた。
「今だけは、おれだけの兄貴で居てください……。」
涼介は小さな声で呟いて、愛する男の胸に頬を寄せた。
本日もお読みいただき、ありがとうございます。(`・ω・´)
(*/∇\*) きゃあ~♡
とうとう、思いを遂げた涼介です。
月虹の過去を知ってしまうと、複雑ではありますが、今だけは傍に……
残り一話になりました。よろしくお願いします。(〃゚∇゚〃)
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