ずっと君を待っていた・25
毒に苦しむオロチの八つの首は、それぞれに水を求め大地を走り、ついに八つの山々のふもとに酒の入った甕を見つけた。
渇いた喉を潤すように、ごくり、ごくりと喉を鳴らしオロチは強い酒を飲んだ。
それが身体に回り、動きを鈍くさせることなど考えもせず、渇きを癒すために今はひたすらあおった。
毒のせいで起きた喉の激しい渇きが、大量の水分を欲していた。
怒りと悲しみの咆哮が大地に轟き、天は掻き曇り心配した龍神は雨を降らせたが、今や青息吐息のオロチはのたうつばかりである。
強い酒が、正常な感覚さえも狂わせていた。
「オロチーーー!!」
声を限りに自分を呼ぶ、愛しい娘が必死で小高い山に駆け上がり、自分に近づこうとしていた。
オロチの爛れた目に映るクシナダヒメは、その手を伸ばし触れようとしていた。
恋人の名を叫ぶクシナダヒメに、「そなたは我のものだ!」・・・と言い放ったスサノオは、神の息を吹きかけその姿を、ベンガラ漆の紅い櫛(クシ)に変えるとそっと自分の髪に挿した。
毒と酒のせいで、今やオロチは緩慢にしか動けない。
その様子を見て、長剣、十束剣(とつかのつるぎ)を携えて、瀕死のオロチについにスサノオはひらりと刃を向けた。
その顔に張り付くのは、醜く嫉妬に狂う歪んだ笑みだ。
『うぬ。・・・神々に名を連ねるものが・・・何という卑怯・・・』
呻くようにオロチがスサノオを呪う。
『高天原の神々よ、我の願いを聞き届けよ!』
『父王よ、我の敬う海の神よ。』
『我は、この上は、スサノオに討ち果たされ十束剣(とつかのつるぎ)の錆となる。』
『この怒りを、思い知るがいい!』
最後に渾身の力を振るって、オロチは憎いスサノオに一矢報いんと尾を立ち上げた。
これほどまでの、仕打ちを神々が許すはずは無いと思った。
だが、結局、ひとなぎで山々を崩すほどの力を持っている鞭のようにしなった尾を、オロチはただ大地に思い切り叩きつけるしかなかった。
スサノオの髪には、愛しい娘が櫛に姿を変えられ、挿してあったのだ。
クシナダヒメを守るため、オロチはわが身をさらした。
『我の・・・クシナダを盾に使うとは・・・』
手も出せず光を失い閉じようとする大蛇の目から、思わず零れた血涙があたりに降り注ぐと、瞬時にスサノオの術は解け、クシナダヒメは人の姿に戻り髪から滑り落ちた。
クシナダは恋人の下へとスサノオを振り切って駆け寄った。
「オロチ!オロチ・・・いやっ、死んではいやっ。」
クシナダヒメは、重傷を負い恐ろしい形相で断末魔の苦しみにのたうち喘ぐ、山のように巨大な大蛇に触れた。
その姿を見ても、クシナダヒメは怯えなかった。
「聞こえる?オロチ。わたくしはあなたがどんな姿でも二世を誓おうと思ったの。わたくしはあなたがどんな姿になっても、きっと見つけることが出来る。本当よ・・・オロチ。」
「クシナダ・・・」
「オロチ、お願い。今、ここで来世を約束して。どんな姿でもいいから再び出会うと。」
『・・・クシナダ・・・今世で、この身は朽ち果てようとも・・・我は、転生する・・・』
『美しい、クシナダ・・・その願いを忘れぬ・・・』
「オロチ・・・天地で誰よりも愛しい人・・・」
『いつか、めぐり会った時に、もう・・・一度、名を・・・名を聞こう・・・』
********************************************
いつもお読みいただきありがとうございます。
拍手もポチも、励みになっています。
明日も、がんばります。 此花
・・・だったらいいなという、此花の創造の中の神話です。
********************************************
昨夜・・・というか、今朝でしょうか。
チャットにお邪魔しました。お話してくださってありがとうございました。
企画についてのお話、絵師さまのお話、目からうろこでした。。。。。。。。。。。。。。。。。。
緊張しながらも、色々貴重なお話が聞けて、あれこれためになります。単語だけで知っていた「リバ]が会話に出てきて思わず[おお~~!]こういう使い方なのねと、一つお利口に・・・。・゜゜・(/▽\*)・゜゜・今度、使ってみよう・・・きゃあ。
皆さま、カウンターは直ぐに回ってしまうので、ダブルカウントはしていないとおっしゃっていました。
ダブルカウント・・・?自分のを見に行きましたら、ダブルカウント。踏んでくださるだけで、ぐるぐる回ります。「おお~~!」←しょっちゅう、これです。
人気作家さんだったら、確かに嬉しいリクエストの嵐で大変なことになりそうです。
此花は、今は物語のストックがあるので昼は旧作の加筆修正したもの、夜は新作を、がんがんアップしています。カウンターが回るのを眺めているのが楽しいので、もう少しだけこのままにしておこうと思います。
リアルが多忙になる来月とか、来年とか時期を考えることにします。
きっとお一人が12、3回くらいは見に来てくださっています、本当にありがたいです。
今は、過去作品に目を通してくださる方がいたり、拍手を下さったり、感想を下さったりしてその度ごとに嬉しくて舞い踊ってます。
納得の行くエチ場面が書けるようになったら、カウンターの変更を・・・い、一生、このまま・・・?(´・ω・`)
渇いた喉を潤すように、ごくり、ごくりと喉を鳴らしオロチは強い酒を飲んだ。
それが身体に回り、動きを鈍くさせることなど考えもせず、渇きを癒すために今はひたすらあおった。
毒のせいで起きた喉の激しい渇きが、大量の水分を欲していた。
怒りと悲しみの咆哮が大地に轟き、天は掻き曇り心配した龍神は雨を降らせたが、今や青息吐息のオロチはのたうつばかりである。
強い酒が、正常な感覚さえも狂わせていた。
「オロチーーー!!」
声を限りに自分を呼ぶ、愛しい娘が必死で小高い山に駆け上がり、自分に近づこうとしていた。
オロチの爛れた目に映るクシナダヒメは、その手を伸ばし触れようとしていた。
恋人の名を叫ぶクシナダヒメに、「そなたは我のものだ!」・・・と言い放ったスサノオは、神の息を吹きかけその姿を、ベンガラ漆の紅い櫛(クシ)に変えるとそっと自分の髪に挿した。
毒と酒のせいで、今やオロチは緩慢にしか動けない。
その様子を見て、長剣、十束剣(とつかのつるぎ)を携えて、瀕死のオロチについにスサノオはひらりと刃を向けた。
その顔に張り付くのは、醜く嫉妬に狂う歪んだ笑みだ。
『うぬ。・・・神々に名を連ねるものが・・・何という卑怯・・・』
呻くようにオロチがスサノオを呪う。
『高天原の神々よ、我の願いを聞き届けよ!』
『父王よ、我の敬う海の神よ。』
『我は、この上は、スサノオに討ち果たされ十束剣(とつかのつるぎ)の錆となる。』
『この怒りを、思い知るがいい!』
最後に渾身の力を振るって、オロチは憎いスサノオに一矢報いんと尾を立ち上げた。
これほどまでの、仕打ちを神々が許すはずは無いと思った。
だが、結局、ひとなぎで山々を崩すほどの力を持っている鞭のようにしなった尾を、オロチはただ大地に思い切り叩きつけるしかなかった。
スサノオの髪には、愛しい娘が櫛に姿を変えられ、挿してあったのだ。
クシナダヒメを守るため、オロチはわが身をさらした。
『我の・・・クシナダを盾に使うとは・・・』
手も出せず光を失い閉じようとする大蛇の目から、思わず零れた血涙があたりに降り注ぐと、瞬時にスサノオの術は解け、クシナダヒメは人の姿に戻り髪から滑り落ちた。
クシナダは恋人の下へとスサノオを振り切って駆け寄った。
「オロチ!オロチ・・・いやっ、死んではいやっ。」
クシナダヒメは、重傷を負い恐ろしい形相で断末魔の苦しみにのたうち喘ぐ、山のように巨大な大蛇に触れた。
その姿を見ても、クシナダヒメは怯えなかった。
「聞こえる?オロチ。わたくしはあなたがどんな姿でも二世を誓おうと思ったの。わたくしはあなたがどんな姿になっても、きっと見つけることが出来る。本当よ・・・オロチ。」
「クシナダ・・・」
「オロチ、お願い。今、ここで来世を約束して。どんな姿でもいいから再び出会うと。」
『・・・クシナダ・・・今世で、この身は朽ち果てようとも・・・我は、転生する・・・』
『美しい、クシナダ・・・その願いを忘れぬ・・・』
「オロチ・・・天地で誰よりも愛しい人・・・」
『いつか、めぐり会った時に、もう・・・一度、名を・・・名を聞こう・・・』
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いつもお読みいただきありがとうございます。
拍手もポチも、励みになっています。
明日も、がんばります。 此花
・・・だったらいいなという、此花の創造の中の神話です。
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昨夜・・・というか、今朝でしょうか。
チャットにお邪魔しました。お話してくださってありがとうございました。
企画についてのお話、絵師さまのお話、目からうろこでした。。。。。。。。。。。。。。。。。。
緊張しながらも、色々貴重なお話が聞けて、あれこれためになります。単語だけで知っていた「リバ]が会話に出てきて思わず[おお~~!]こういう使い方なのねと、一つお利口に・・・。・゜゜・(/▽\*)・゜゜・今度、使ってみよう・・・きゃあ。
皆さま、カウンターは直ぐに回ってしまうので、ダブルカウントはしていないとおっしゃっていました。
ダブルカウント・・・?自分のを見に行きましたら、ダブルカウント。踏んでくださるだけで、ぐるぐる回ります。「おお~~!」←しょっちゅう、これです。
人気作家さんだったら、確かに嬉しいリクエストの嵐で大変なことになりそうです。
此花は、今は物語のストックがあるので昼は旧作の加筆修正したもの、夜は新作を、がんがんアップしています。カウンターが回るのを眺めているのが楽しいので、もう少しだけこのままにしておこうと思います。
リアルが多忙になる来月とか、来年とか時期を考えることにします。
きっとお一人が12、3回くらいは見に来てくださっています、本当にありがたいです。
今は、過去作品に目を通してくださる方がいたり、拍手を下さったり、感想を下さったりしてその度ごとに嬉しくて舞い踊ってます。
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