ずっと君を待っていた・21
龍神の誓いを聞き、高天原の天照大明神(アマテラス)も、若い二人の誓いを聞き、天から祝福の七色の光芒を放った。
天かける虹の下でオロチは誓った。
「大風を起こし、山を崩し田畑を荒らすような、愚かな真似は二度とせぬ。我はこの後、人の世に慈愛を注ぐと約束する。」
クシナダヒメは、龍神の光る目に嘘はないと本心から悟った。
「幾久しく、共に穏やかな常世を見届けられますように。」
「そなたの父母のアシナヅチ、テナヅチにも許しを請おう。手足の神に息子として、人のように終生の孝養を捧げよう。」
ころ・・・とクシナダは可愛らしく鈴を転がすように笑った。
「では、わたくしは龍神さまとオロチさまにお誓い致しましょう。」
「いついつまでも、この身は朽ち果てても、あなた様と共に・・・」
そうして、二つの影は溶けて一つになったのだ。
何もなければ永遠に、オロチとクシナダは鏡の中の世界のような美しい緑の野山を、統べる神となるはずだった。
アシナヅチ、テナヅチの元を訪れた、高天原からやってきたスサノオと言う男神の存在さえなければ、誰もが平和に暮らせるはずだった。
国を創ったイザナミの息子、スサノオは神々の住む高天原を追放されて、この地に流れて来たのだ。
それが、今に続く全ての破壊の始まりだった。
イザナミに治めよと言われた国を放棄して、母の住む根(地下)の国へ会いに行くのだと言い張って聞かぬ男神スサノオノミコト。
見た目だけは大層立派に見えたが、中身は酷く荒々しく神の末席を汚すものとしては幼かった。
父の言葉に背いたスサノオは、ついに姉にすら弓矢で追い払われ、腹立ち紛れに生きた猪の皮をはぎ機織り場に投げ込んだ。
頭上から血の付いた獣の皮が降って来て、多くの侍女が卒倒し、国主は仕方なく高天原からの追放の沙汰を下す。
自業自得ながら、神として居場所をなくし、天界から地上へと追われたスサノオは、行き場を失って荒れていた。
だが、そのようなことは誰も知らず、立派な男神が来たと喜んでクシナダヒメの父母のアシナヅチ、テナヅチは歓待した。
そうしてオロチの胸に抱かれるクシナダヒメの美しさに心奪われたスサノオは、横恋慕し密かに略奪を決意したのだ。
横合いから懸想されたとも知らず、両親と話を弾ませる客人のために、クシナダヒメは夕餉の支度をしたのだった。
聞かれているとも知らず、クシナダヒメは両親に愛する人が挨拶に来たいと言っていると、頬を染めて報告した。
娘の幸せを願う老夫婦も快く挨拶を受け、後は幾久しく添い遂げれば良いだけの話だった。
オロチが結婚の申し込みに来る日、スサノオはクシナダヒメの父母のアシナヅチ、テナヅチにじぶんの素性を告げた。
「私は、国を創ったイザナミ、イザナギの息子、建速須佐之男命(タケハヤスサノオノミコト)である。」
素性に恐れ入った両親は、娘クシナダヒメを、自分の嫁にくれないかと言うスサノオにさすがにそこは、残念ながらもう相手が決まっているのです、と伝えた。
スサノオは、言いにくそうに、だがきっぱりと二人に告げた。
「では、一宿一飯の礼に、教えてやろう。」
スサノオの邪まな心が、びりとほくそ笑んだ。
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明日も、がんばります。 此花
天かける虹の下でオロチは誓った。
「大風を起こし、山を崩し田畑を荒らすような、愚かな真似は二度とせぬ。我はこの後、人の世に慈愛を注ぐと約束する。」
クシナダヒメは、龍神の光る目に嘘はないと本心から悟った。
「幾久しく、共に穏やかな常世を見届けられますように。」
「そなたの父母のアシナヅチ、テナヅチにも許しを請おう。手足の神に息子として、人のように終生の孝養を捧げよう。」
ころ・・・とクシナダは可愛らしく鈴を転がすように笑った。
「では、わたくしは龍神さまとオロチさまにお誓い致しましょう。」
「いついつまでも、この身は朽ち果てても、あなた様と共に・・・」
そうして、二つの影は溶けて一つになったのだ。
何もなければ永遠に、オロチとクシナダは鏡の中の世界のような美しい緑の野山を、統べる神となるはずだった。
アシナヅチ、テナヅチの元を訪れた、高天原からやってきたスサノオと言う男神の存在さえなければ、誰もが平和に暮らせるはずだった。
国を創ったイザナミの息子、スサノオは神々の住む高天原を追放されて、この地に流れて来たのだ。
それが、今に続く全ての破壊の始まりだった。
イザナミに治めよと言われた国を放棄して、母の住む根(地下)の国へ会いに行くのだと言い張って聞かぬ男神スサノオノミコト。
見た目だけは大層立派に見えたが、中身は酷く荒々しく神の末席を汚すものとしては幼かった。
父の言葉に背いたスサノオは、ついに姉にすら弓矢で追い払われ、腹立ち紛れに生きた猪の皮をはぎ機織り場に投げ込んだ。
頭上から血の付いた獣の皮が降って来て、多くの侍女が卒倒し、国主は仕方なく高天原からの追放の沙汰を下す。
自業自得ながら、神として居場所をなくし、天界から地上へと追われたスサノオは、行き場を失って荒れていた。
だが、そのようなことは誰も知らず、立派な男神が来たと喜んでクシナダヒメの父母のアシナヅチ、テナヅチは歓待した。
そうしてオロチの胸に抱かれるクシナダヒメの美しさに心奪われたスサノオは、横恋慕し密かに略奪を決意したのだ。
横合いから懸想されたとも知らず、両親と話を弾ませる客人のために、クシナダヒメは夕餉の支度をしたのだった。
聞かれているとも知らず、クシナダヒメは両親に愛する人が挨拶に来たいと言っていると、頬を染めて報告した。
娘の幸せを願う老夫婦も快く挨拶を受け、後は幾久しく添い遂げれば良いだけの話だった。
オロチが結婚の申し込みに来る日、スサノオはクシナダヒメの父母のアシナヅチ、テナヅチにじぶんの素性を告げた。
「私は、国を創ったイザナミ、イザナギの息子、建速須佐之男命(タケハヤスサノオノミコト)である。」
素性に恐れ入った両親は、娘クシナダヒメを、自分の嫁にくれないかと言うスサノオにさすがにそこは、残念ながらもう相手が決まっているのです、と伝えた。
スサノオは、言いにくそうに、だがきっぱりと二人に告げた。
「では、一宿一飯の礼に、教えてやろう。」
スサノオの邪まな心が、びりとほくそ笑んだ。
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