夢の欠片(かけら)・3
まるで西洋絵画を眺めるように憧憬を込めて、征四郎は奏をくいいるように見つめていた。
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「・・・如月さんは、ぼくの理想です。」
「わたくしの奏さまは、おっしゃる通り素晴らしい方です。征四郎さま。」
とうとう、默っていられず颯が声を荒げた。
「如月!白雪!」
「三文芝居は、いい加減にしろ!良いか、征四郎?よく見ろ!如月は笑いを我慢しきれず泣いてるんだ。」
「は・・・い?笑いを我慢・・・?」
先に白雪が、ぷっと噴出してしまった。
「だ・・・駄目だ・・・腹がよじれます・・・。」
「湖上の弟だけあって、素直と言うか、悪びれないと言うか。なんとも一本気な凛とした心根だろうね。征四郎くんは、まるで日輪のようだ。」
ティーカップを片手に、呆然とする征四郎を横目に、奏と白雪は楽しそうに声を上げて笑った。
「え?なんですか?・・・何がそんなにおかしいんですか・・?」
征四郎の兄は、眉間に縦皺を刻み弟に告げた。
「いいか?征四郎。如月の見た目に騙されるな、こいつにお前などが太刀打ちできるものか。」
「如月はこう見えて、近代日本の経済を育て上げたと言われるやり手だぞ。」
如月奏は、如菩薩と言われた端整な顔で、じっと征四郎の瞳を覗き込んだ。
「こんな風にね、油断のならないさまを『生き馬の目を抜く』というんですよ。気を付けてくださいね、征四郎くん・・・?」
麗人は、艶然と微笑み、征四郎は、その笑みにやはりうっとりと見惚れていた。
「東京って、怖い・・・けど、やっぱりどうしようもなく・・・綺麗だ、奏さん。」
癖のない前髪を、右手で耳にかけながら奏は、征四郎の耳元に唇を寄せた。
「ぼくはあなたの兄上には散々いじめられましたからね、江戸の仇を長崎で討とうと思ってあなたが来るのを楽しみにしてたんですよ。」
「うんと・・・仲良くしましょうね。」
「仲良く・・・?」
征四郎の鼓動がとくんと跳ねた。
「ええ。こんな風に・・・ね。」
奏は征四郎の首に腕を巻き付け、その赤い唇は征四郎の頬をかすめた。
耳元でささやかれた征四郎が真っ赤になる。
思わず取り落としたカップは、見事に白雪の伸ばした手の内に収まった。
できの良い小姓は、さすがにそつがない。
耳まで熟れた征四郎が、心酔する奏に一目会うなり恋に落ちたのも、不思議な話ではない。
如月奏の、幸福の断片はそこかしこに溢れていた。
(´・ω・`)白雪:「本気ですか?奏さま。」
(*⌒∇⌒*)♪奏:「あはは。冗談に決まっているだろう、白雪。」
(〃▽〃) 征四郎:「ほっぺに接吻されちゃった~・・・奏さん~・・・」
∑( ̄□ ̄;)颯:「征四郎、大丈夫か?」
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