深い森の奥の魔導師・16
*************************
巨大な獣が地獄の底から這いあがってこないように、全身を楔(くさび)として大魔導師達は国を守る。
力のある大魔導師は東西南北に置かれ、中でも東西の大きな二つの穴は結界が破られればおそらくそこが出入り口となる。
「行くよ、ジェード!・・・」
指先にともった小さな冷たい炎が、以前よりも大きくなっている。
ジェードとトモは心を一つにし念を込める。
地面を走る青白い稲妻は、今や消える寸前のエルの結界を何度も辿り、補強した。
≪Lux lucis sursum via!「道を照らせ」≫
「結界が強くなった。ほら、御覽。」
見守る大魔導師オメガの足元で、魔界から忍び込もうとした小物が、結界に触れて瞬時に消滅した。
大魔導師エルの残した古代竜カーディナルがジェードに新しい「古い言葉」を告げた。
魔導師を失って哀しみに浸っている時間もなく、今はひたすら「学び」、気を集める。
トモは魔導師の卵キュラを思うと、涙がこぼれそうになるのを我慢して修行に励んでいた。
哀しみを指先に込めて、冷たい青い炎を灯すトモに迷いはない。
「キュラ、待ってて。おれ強くなるから。」
「きっと、助けるから!」
思いを乗せた青白い炎が、冥府に向かって走ってゆく。
すぐ傍まで走ってきたトモの結界をすくい上げて握り潰し、ベリアルが酷薄に笑った。
「少しは使えるようになってきたか、ひよこめ。」
*************************
魔導師の世界の崩壊は、隣り合った人間界も混沌へと導くことになる。
互いに干渉しあうことの無い世界は、それぞれの存在を感じることはないが、カードで出来たアーチのように微妙な均衡で支えあっている。
天界と魔界の間にある、人間界のちょうど裏側に重なるようにして、魔導師の世界は存在していた。
たまに異世界の存在を感じる人間もいるようだったが、その度ごとに大魔導師は地軸をいじり次元を変えて、地道に気配を消していた。
重なった部分が破れて、たまに魔導師の世界に紛れ込んだりするのを、弱い人間たちは神隠しなどと呼ぶ。
天界、魔界、魔導師の世界、すべての中で一番弱い彼らは、自分たちが目に見えない存在に守られていることを知らない。
干渉を嫌いそのくせ真実に畏怖し、覗き見た生物に名前を付け慄いた。
愚かで小心な使い魔のような人間たちを、魔導師の世界も天界も、魔界でさえも愛した。
愛すればこそ、骨を食らうほど欲していた。
****************************
ヾ(。`Д´。)ノ彡キュラ:「ちょっと~!ここどこ~?」←球の中
(´/ω;`)トモ:「キュラに早くあいたいよ、・・・どこにいるの?」
ヾ(。`Д´。)ノ彡キュラ:「はよ来いやっ!ぼけっ!かすっ!」
(*´・ω・)(・ω・`*)トモ・ジェード:「も、諦める?」
ヾ(。`Д´。)ノ彡キュラ:「こら~!」
ランキングに参加しております。
応援していただけたら嬉しいです。此花
- 関連記事
-
- 深い森の奥の魔導師・23 (2011/02/15)
- 深い森の奥の魔導師・22 (2011/02/14)
- 深い森の奥の魔導師・21 (2011/02/07)
- 深い森の奥の魔導師・20 (2011/02/04)
- 深い森の奥の魔導師・19 (2011/02/03)
- 深い森の奥の魔導師・18 (2011/02/02)
- 深い森の奥の魔導師・17 (2011/02/01)
- 深い森の奥の魔導師・16 (2011/01/31)
- 深い森の奥の魔導師・15 (2011/01/30)
- 深い森の奥の魔導師・14【R-18】 (2011/01/28)
- 深い森の奥の魔導師・13 (2011/01/27)
- 深い森の奥の魔導師・12 (2011/01/26)
- 深い森の奥の魔導師・11 (2011/01/25)
- 深い森の奥の魔導師・10 (2011/01/24)
- 深い森の奥の魔導師・9 (2011/01/23)