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深い森の奥の魔導師・24 

翼の付け根で必死にキュラを思うトモの気持ちは痛いほどに判る。
だが時は多くは残されていなかった。
トモの願いを振り切って、ジェードは旋回を続けた。

****************************

大魔導師オメガの策はこうだった。

魔界獣の好む、獣の血、脂、人の匂い、魔導師の香り、すべてを合わせて毛玉を作り、魔界獣の元に送る。
彼らは人型になっているときは、狡猾で猛寧な別々の悪魔だったが魔界獣となっているときには、本能が理性を凌駕する。
腹が減れば食欲に走り、感情のまま肉欲に溺れ、欲の前に理性をかなぐり捨てるのが魔界獣の生態だった。

本能のままに、脂を染み込ませた玉に喰らい付く。
隣り合う頭どうしが烈しくぶつかり合い、浅ましく脂玉を貪る姿が卵たちを脅えさせた。
時折、魔界の公爵と言われる美貌のアスタロトやベルゼバブ、サタン等の顔をちらつかせながら、6つの頭は空き腹に獣脂を詰め込んだ。

脂玉から立ち上る腐臭は魔獣の士気を高め、狂喜の咆哮が雷鳴となって夜空を走る。
つんざく獣の雄叫びに、魔導師達の中には畏れのあまり気を失う者たちもいた。

「よいか!好物の脂を飮ませ、魔界獣の腹の中を脂漬けにするのだ。」

豪胆な者たちは身を乗り出し、戦いの経験のない卵たちは顔色を無くした。

「トモとジェードが落とした首の付け根を狙って、赤魔法を集中する。魔導師のすべての力を持って、やつめを巨大な火の玉にするのだ。」
「でも・・・でも・・」と、絞り出すように、一人の卵が問うた。
「もし、それでも・・・やっつけられなかったら・・・・?みんな、倒されてしまったら・・・?どうするのですか、大魔導師オメガ。」
「天界から墜ちても死ななかった、巨大なすり鉢型の魔界を作った最後の「黙示録のドラゴン」が、本当に僕らの手でやっつけられるの?」

大魔導師オメガは、優しく微笑むと恐怖に引きつり震える魔導師の卵を、そっと抱き寄せた。
赤魔法の魔導師は自分の長く翻ったマントの中に、卵を入れると気休めの呪文をかけてやった。

「そなたの、勇気が本物であるように。」
「誰しも皆、怖いのだ。だが誰も独りではない。」

直接、大魔導師オメガに声を掛けられた卵は、上ずりながらもしっかりと返事をした。

≪Ego tribuo totus mei(私のすべてを捧げます)≫

*******************
上空を旋回するジェードに、飛翔する古代竜が近づき何事かを告げた。
トモに理解のできない古い言葉が、交わされる。

「ジェード!どうしたの?俺にわかるように・・・あっ!」

巨大な神聖な竜のカーディナルが、ジェードの背からひょいとトモを咥えると身体を翻しその場から一気に立ち去った。

「カーディナル!放して!…ジェードと戦うんだ!カーディナルったら!」

強大な竜の口先からぶら下げられて、どんなに手足をばたつかせてもトモの叫びは届いていないようだった。
ジェードから遠く離れた崖の上に置かれたトモは、ジェードが何をするか見守るしかなかった。
トモの見開いた瞳に、ジェードがこちらを向いてばたくのが見えた。

「キュエーーーー!!」
「ジェード!!俺を連れて行けーーーーっ!!ジェード!!」
「ジェード!!行っちゃ駄目だ!」

急降下するジェードがカーディナルの放った古代呪文に包まれ、一閃の炎の矢となった。



****************************

m111157改 

。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。トモ:「ジェード!いやだ~~~!!」

!(`・ω・´)ジェード:「トモゥ、キュエッ!」←今はすべきことをしなければ!

。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。トモ:「うぅ~、でも、でも~・・・。」


※携帯からは、両方とも一番下にスクロールして「PC向けのページ」を押して「決定」で完了になるそうです。
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6 Comments

此花咲耶  

けいったんさま

> ジェード...
> 炎を纏い 己の身を挺して 愛する者を 守る勇敢な姿に ただただ 頭をたれ その尊厳さに 平伏すしかない

___φ(。_。*)メモメモなんという素敵な台詞だろう…大魔導師オメガの台詞にもらってもいいですか?
どうどうの、パクリ宣言!(`・ω・´)
超かこいいです、けいったんさま。

> トモの使い魔として 固く結ばれた今 ジェードは、 なすべき事を しっかりと分かっているのですね。
> トモも これで 今 何をすべきか もう 分かったよね!
>
> 炎龍の矢!エイッ!(。-ω-)ノ Σ>―(;=△=)ノ→グサッ!!Σ...byebye☆

泣いている暇はないけどきっと泣きます。

。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。トモ:「あぅ~・・・・・」

ヾ(。`Д´。)ノジェード:「すること、しろや~~!!」

コメントありがとうございます。パクらせてください(*⌒▽⌒*)♪

2011/02/17 (Thu) 13:29 | REPLY |   

此花咲耶  

サフランさま

> えっ~、ジェードが特攻隊になったの~!?
> 違いますよね!?
> 生きて帰りますよね!?
>
黙示録のドラゴンにたらふく脂を飮ませた後は、火をかけなければなりません。
( °o° )トモ:「ジェード・・・」←茫然自失・・・
基本、全作品ハッピーエンドですので安心してください(*⌒▽⌒*)♪

> バレンタインチョコを夫に渡すのをけろっと忘れてました~(笑)。
> …ってか、毎年、渡してねぇ~(笑)。

サフランままん・・・(´・ω・`) だめじゃん~
ぱぱんがぐれたら、どうするの。
で、ホワイトデーだけ理不尽に要求する?

(ΦωΦ):「ぱぱん、ホワイトデーはバーキンの色違いでいいわ。そのあと、三ツ星でお食事ね。」

Σ( ̄口 ̄*):「てか、・・・バレンタインもらってね~し。ま、いいけど~」

コメントありがとうございました。うれしかったです(*⌒▽⌒*)♪

2011/02/17 (Thu) 13:23 | REPLY |   

けいったん  

ジェード

ジェード...
炎を纏い 己の身を挺して 愛する者を 守る勇敢な姿に ただただ 頭をたれ その尊厳さに 平伏すしかない

トモの使い魔として 固く結ばれた今 ジェードは、 なすべき事を しっかりと分かっているのですね。
トモも これで 今 何をすべきか もう 分かったよね!

炎龍の矢!エイッ!(。-ω-)ノ Σ>―(;=△=)ノ→グサッ!!Σ...byebye☆

2011/02/17 (Thu) 10:09 | REPLY |   

サフラン  

ジェードの特攻!?

えっ~、ジェードが特攻隊になったの~!?
違いますよね!?
生きて帰りますよね!?

バレンタインチョコを夫に渡すのをけろっと忘れてました~(笑)。
…ってか、毎年、渡してねぇ~(笑)。

2011/02/17 (Thu) 08:05 | EDIT | REPLY |   

此花咲耶  

ねむりこひめさま

> わー、更新がこんなに!

(*⌒▽⌒*)♪がんばってます!

> いよいよ戦いも本格的になってきましたね!
> ジェード、頑張れwww!

(`・ω・´) !「キュエッ!」

コメントありがとうございました。うれしかったです(*⌒▽⌒*)♪

2011/02/16 (Wed) 21:38 | REPLY |   

ねむりこひめ  

No title

わー、更新がこんなに!
いよいよ戦いも本格的になってきましたね!
ジェード、頑張れwww!

2011/02/16 (Wed) 21:06 | EDIT | REPLY |   

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