深い森の奥の魔導師・19
トモが泣きながら放った大きな赤い炎が、キュラの姿をした淫魔を燃え上がらせた。
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「キュラーーーー!!」
トトが飛びつき、とっさに炎を払おうとした。
「キュエーー!」
≪Transfer it absent!(追いはらえ)≫
ジェードとトモは立ちはだかると、なおも消滅の古代呪文を唱え続けた。
『助けて、トト!トト!』
淫魔の顔と、キュラの顔が入れ替わり交錯する。
『トト、苦しい・・・よ・・・トト…!』
「トモ!ジェード!消滅呪文を止めて!キュラが苦しんでいる・…キュラーーー!」
キュラの顔で苦しむ淫魔が、トトに向かって手を差し伸べトトはその手を掴もうとした。
その瞬間、ずるりとキュラの顔がずり落ち、醜悪な淫魔の本当の顔が出現する。
トトは、悲鳴を上げて飛びずさった。
『魔導師め!ひよこの魔導師め!・・・キュラが手の内にあること、忘れるな!』
「キュエーー!」
≪Transfer it absent!(追いはらえ)≫
魔界に通じる道を、淫魔がもんどりうって転がり落ちた。
「キュラーーーー!」
トトを抱きしめたトモの頬を、キュラを救えなかった悔し涙が後から後から溢れてくる。
「トト!違うよ、違う。あれは淫魔だったよ。大魔導師さえ惑わせるインキュバスの「まやかし」だよ。」
「トモ・・・」
「駄目だよ。魔導師がこんなことでくじけてちゃ・・・うーーー・・・っ・・・」
「トモ。ごめん、トモ。親友だったのに。君の方がずっと長く一緒のいたのに。」
二人は、少しの間キュラを思って声を上げて泣いたが、しばらくすると涙を払って立ち上がった。
こんなことでくじけてはいられない。
「行こ・・・トト。俺らはどんなことがあっても、魔獣を封印しなきゃ。」
二人の魔導師の卵は立ちあがり、揃って結界に呪文をかけた。
小さなトトの蝙蝠が、トトの成長を認め、輪郭を震わせると雄々しく姿を変えた。
「トト!やったよ!」
トトが掴まって、空を跳べるほどのオオコウモリは新しい翼を振り、風を起こした。
「変化した!トト!君の蝙蝠だって、ちゃんと変態するんだ!」
「うわ~、や・・・やったぁ・・・」
魔導師の成長と共に、変態を重ねてゆく使い魔もいる。
トトの蝙蝠はオオコウモリの姿から、やがてはトトを乗せてもびくともしない翼竜へと変化してゆく。
『さきよみ』の姿をジェードは、トモに送りトモはトトに告げた。
「す・・・ごい!君の小さな蝙蝠は、翼竜になるよ、トト!」
歓喜が背筋を這い登り、今や魔導師の卵はそろって一人前の魔導師になりかけた。
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(*⌒∇⌒*)♪トモ:「すごいじゃん!トト!ちびの蝙蝠(こうもり)が翼竜とかになってるし!」
(´/ω;`)トト:「おれ、一番ダメな使い魔に当たったって思ってたのに・・・」
ヾ(。`Д´。)ノ蝙蝠:「一番ダメって何~~!?」
(*´・ω・)(・ω・`*)トモ・トト:「だって、蝙蝠が翼竜になるなんてね~」
|ω・`)此花:「いいじゃん~」
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