深い森の奥の魔導師・3
*********************
一方その頃、トモは大魔導師オメガに呼ばれ、使い魔となった人型の竜を同道していた。
魔導師の卵が使い魔を得た場合、報告の義務があった。
「サラマンドラ「火喰い」の中でも、この子はとりわけ血統の良い竜だね。」
「まだ、体が完成しきっていないうちは、無理はしないほうがいい。使い魔と身体をつなぐのは、君がもっと成長・・・どうしたね?」
トモはふるふると唇を震わせて、泣きそうになっていた。
まともな魔法と言えば、初級クラスの小さな子たちが使うようなものしかマスターしていない。
そんな自分に、ユニコーンと並ぶ高級精霊の竜の使い魔ができたなんて・・・。
記憶を奪われて、人間界に落とされることを思えば、使い魔ができたのは確かにうれしかったが、自分のことよりもこの美しい青い竜に気の毒な気がしたのだ。
何もできない自分には、悲しいほど釣り合わない気がしていた。
「お・・俺っ・・・。白魔法(幻術)も、赤魔法(火炎)も、青魔法(水流)も・・・みんなできないのに・・・ひっく・・・。」
大魔導師オメガはトモの肩をやさしく抱いた。
「君を選んだのは、ほかでもない彼だよ。ほら、竜が心配そうな顔をしている。」
トモの目に輪郭がにじんだ青い竜は、不安げにじっと様子を窺うように顔を覗き込んでいた。
「使い魔に名前を付けたら、契約は完了だよ。そうすれば、たとえ地の果てへでも、指笛ひとつで君の元へと馳せ参じるだろうね。」
トモ…と、大魔導師オメガはいつになく真剣な顔を向けた。
「大魔導師エルの使い魔が、竜なのを知っているかい?」
「あ、はい。もちろんです。大型の竜に乗って飛んでいるのを見たことがありますから。とても、大きな翼で空が見えなくなるくらいでした。」
「この子は魔導師エルの使い魔よりも、素晴らしい使徒となるだろう。君たちもいつか、比翼の鳥と呼ばれるようになればいいね。」
聞きなれない言葉を告げて、大魔導師オメガは相好を崩した。
「比翼の鳥というのはね、一つの顔に、一つの翼をもつ雌雄の鳥のことだよ。常に二体で飛ぶんだ。」
青い若い竜は、力強くうなずき主となったトモの肩を抱く。
トモは胸の奥から湧き上がる熱に、身震いした。
この竜が自ら、ほかでもない俺を選んだ。
使い魔に恥じない、立派な魔導師になろうと心のうちで強く誓った。
*********************************
「物語の設定」
魔導師と契約を結んだ使い魔は、必要に応じてヒト型に変身できます。
使い魔の種類によって、使える魔法の種類が決まる設定です。
トモの使い魔は火喰い竜ですので、赤魔法(火炎)を使えば炎を自在に扱えます。
友人キュラの使う魔法は、白魔法(幻術)ということになっています。こちらの使い魔は銀色の狐です。
こちらもヒト型に変身します。
設定考えるのが、楽しくなってしまいました。
自分だけのファンタジーの世界が広がります。
拍手もポチもありがとうございます。
ランキングに参加していますので、よろしくお願いします。 此花
- 関連記事
-
- 深い森の奥の魔導師・15 (2011/01/30)
- 深い森の奥の魔導師・14【R-18】 (2011/01/28)
- 深い森の奥の魔導師・13 (2011/01/27)
- 深い森の奥の魔導師・12 (2011/01/26)
- 深い森の奥の魔導師・11 (2011/01/25)
- 深い森の奥の魔導師・10 (2011/01/24)
- 深い森の奥の魔導師・9 (2011/01/23)
- 深い森の奥の魔導師・8 (2011/01/22)
- 深い森の奥の魔導師・7 【R-15】 (2011/01/21)
- 深い森の奥の魔導師・6 (2011/01/20)
- 深い森の奥の魔導師・5 (2011/01/19)
- 深い森の奥の魔導師・4 【R-18】 (2011/01/18)
- 深い森の奥の魔導師・3 (2011/01/17)
- 深い森の奥の魔導師 ・2 (2011/01/16)
- 深い森の奥の魔導師 (2011/01/14)