深い森の奥の魔導師・5
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本当のキュラは、淫魔に追い払われ、深い意識の底で膝を抱えて丸くなっていた。
『助けて、トモ・・・トモ・・・』
キュラの姿はそこにあったが、もう本当のキュラの言葉は誰にも届かない。
深い意識の底から、淫魔に乗っ取られた自分を鏡を見るように、虚ろな瞳で眺めていた。
月光を浴びて輝く肢体をグンと伸ばして、偽りの魔導師キュラは、凄絶に美しい微笑みをエリンに向けた。
「よくやった、エリン。褒美だ、気の済むまでこやつの青いミルクを飲め。」
背後にふたつの満月を背負ったキュラは、一糸まとわぬ肢体を惜しみなく使い魔に与えた。
ごくごくと、キュラから溢れるミルクを喉を鳴らして飲みながら、ふと顔を上げてエリンは声をかけた。
「インキュバスさま。その器の按配はいかがで?」
こきと首の骨を鳴らして、キュラは愉快そうに声を上げて笑った。
「この先、飽きるほど腹いっぱい飲ませてやるぞ、エリン。」
エリンは幸福な想像に舌舐めずりをした。
何故か、今やあちこちに、魔界の瘴気が漏れている。
使い魔のエリンは、体を押さえつける魔導師の力が弱くなっているのを感じていた。
魔界から、抑え込まれていた魔達が、続々と裂け目から這い出してきていた。
大魔導師の力が落ちてきている。
それは、見習い魔導師達でさえ、薄々気が付いていた。
魔界と人間界の、ちょうど中間にある魔導師の世界の境界が、脆くおぼろになっていた。
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淫魔ならぬ睡魔の手に抱かれて、此花沈没寸前です。
なので短くてごめんなさい。
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