深い森の奥の魔導師・9
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キュラは・・・トモを抑え込んだキュラは、まるで違う人になってしまったようだった。
強い力で、トモを押さえつけたキュラは、まず髪の色が違っていた。
色粉で染めずに赤褐色の短かった髪が、金色の長い髪に変わる不思議。
それを問う間もなく、トモは押し倒されていた。
腕を掴まれ、指が一本ずつ伸ばされ舐められてゆく。
「だ・・・駄目っ。は、放してっ!キュラ・・・」
「トモ・・・」
顔を近づけたら、芳しい香りが鼻腔をくすぐって意識がかすむ気がする。
トモの知っているキュラは、こんな風に無理強いをするようなことはなかった。
ふざけて頬にキスしたり、抱きしめてきたりすることはあったけど、ぞくぞくと背筋が震えるような視線と愛撫で動けなくするようなことはなかった。
キュラの舌が指の付け根をなぞり、ちろちろとくすぐる度に下腹に熱がこもる気がする。
「放して、キュラ。」
指の先に銀色の橋が光る。
「なぁ・・・甘いな、この分だと、まだあのチビ蜥蜴とはやってないんだろう・・・?」
「やるって?」
「面倒くさい奴だな、こいつ。俺の好きな無垢の匂いがプンプンするんだよ、トモ。隠したって駄目だ。お前はまだ、清らかなままだ。」
「隠したりしてないよ。でも俺はジェードと血の契約を交わしたんだ。だから、もう誰とも体はつながない。キュラとも。」
一瞬、キュラがトモの良く知るとび色の悲しそうな瞳を向けた。
つっ・・・と、キュラの頬に透明な筋が流れた。
『でも、今つないでしまったら・・・?そこへ使い魔が来て血を飲んでしまったら・・・?』
「な・・・に?何を言っているの、キュラ。そんなことできるわけないじゃない。僕は、大魔導師にも誓ったんだよ。」
キュラの指が、まるで違う生き物のようにトモの下肢を這っている。
指が求める先に、淫魔の求める青いミルクの泉が果実となって震えていた。
敏感な細い茎をなぶりながら、細いキュラの指が小刻みに上下する。
トモは、息をつめ身を固くして、じっと自分をなぶるキュラを見つめた。
爬虫類の虹彩が細くなった。
キュラの光る眼を通じて、魔界の恐ろしい「黙示録の獣」が、トモを見つめ返していた。
「黙示録の獣」は、地獄の底から息を殺し大魔導師の力が落ち、大きな穴の開くのを待っている。
魔導師の国の地面に空いた、魔界に通じる空間から「黙示録の獣」は、欠けてゆく月を眺めて咆哮をあげた。
七つの頭に、七つの王冠をかぶり、十本の角を持つ禍々しい赤い魔獣のドラゴンは、業火に身を焼きながらじっと魔界から這い上がる機をうかがっていた。
双月が、弧月になれば結界が弱くなる。
その機に魔界軍は、一気に裂け目を突破するはずだ。
全てを蹴散らし、人間を食い散らかし、創世の混沌の世界に陥れたうえで、再び天界に駆け上がるのだ。
魔界の底から限りない憧憬を込めて、魔獣たちは手に入らない高みを求めていた。
「黙示録の獣」の頭となっている天界を追放された者たちは、恐ろしい姿に変化し純白の神々しい羽根を失ってなお、天界を欲していた。
『・・・もう、後戻りはできないんだ。俺はもう、トモを手に入れて一つになることだけが望みだったのに。』
「うるさい!・・・さっさと、こいつを切り裂いてしまえ!」
「キュラ・・・?」
キュラの影が二つになった。
「何の未練がある?おまえはもうとうに、魔に落ちてしまったのだ。」
『いやだ!俺が欲しかったのは魔力なんかじゃない!俺が欲しかったのは、トモだけだ。何もできないトモがいつの間にかすごい使い魔を見つけて、俺を置いて行ったのが寂しかっただけだ!』
「うるさいやつめ、、出てくるな!そこに沈んでいろ、お前には俺の撒き餌としてもう少し役に立ってもらう。」
キュラの中でせめぎ合う、キュラの本心と巣食った淫魔が叫びあっていた。
トモは呆然と、キュラの様子を眺めていた。
キュラの中でキュラと違う人格が戦っているのが、トモにもわかる。
「キュラ?そこにいるのは、誰なの・・・?」
めまぐるしく、キュラの瞳の色が変わり虹彩が爬虫類のそれになり、濡れた頬がこちらを向いた。
『インキュバス・・・』
「淫魔さ。」
顔にぱさ…と長く美しい金色の糸が束になって、落ちてきた。
淫猥な笑みを浮かべ、魔界の使い魔が無垢に手を伸ばす。
「トモ・・・俺のトモ。ほら、こっちへ来いよ。俺はいつだってお前の大好きなキュラだろ。」
「キュラ…違う。キュラの髪は赤いんだよ。キュラをどこへ隠したの・・・?」
「卵の時みたいに一緒に眠ろう。うんと優しくしてやるから。俺のことずっと好きだって言ってたろ・・・」
「ひっ・・・やぁ!」
優しげなキュラの使う言葉を並べながら、キュラは手を伸ばしぐいとトモの双球を握りこんだ。
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(´・ω・`)トモ:「キュラ~~!」
(〃^∇^)o彡◇インキュバス:「だ~か~ら~、俺がキュラだって!」
。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。トモ:「違う~~!」
インキュバス:「ちっ!」
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