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優しい封印 1 

どこにでもある話だと思う。
父と離婚後、苦労して自分を育ててくれた母親が、あんたに逢わせたい人がいるのと打ち明けた。

「それって、母ちゃん。再婚したいってこと?」

恋をした少女のように、頬を染めて母は肯いた。

「その人とは仕事先で知り合ったの。涼介の事話したら、仲よくできると嬉しいなって言うの。再婚とか堅苦しく考えないで、自分と友達になって欲しいなって。」

「いくつくらいの人なの?」

「母ちゃんより6歳年下なの。初婚なんだ。」

「へぇ。じゃあ、30超えた所か。優しい人?」

頷く母の顔を見て、出来れば応援したいと思った。母の苦労はずっと見て来たし、自分が何もできない事も知っていた。出来るなら、母には幸せになって欲しい。

「いいよ。おれ会ってみる。母ちゃんが好きになった人なら、いいやつなんだと思うしさ。」

「ありがと。そう言ってくれると思ってた。」

きゅと涼介を抱きしめた母の手は、かさかさと荒れていた。

*****

初めて会った母の恋人は、涼介の欲しかった新しいゲームを手に現れた。
仲のいい友人たちはクリスマスや誕生日に手に入れていたが、経済状況を考えたら、決して欲しいとは口に出来ない数万円もする代物だった。サンタの持ってくるプレゼントに格差があると知った小学生低学年以来、涼介はそういうものに期待するのをやめた……はずだった。

「うわ~!」

狭いアパートの一室に歓声があがった。

「これっ!おれの欲しかった奴だ。皆で対戦できるんだよ。……ほんとに貰ってもいいの?」

「たまに対戦してくれるとうれしいんだけど、どうかな。」

「いいよっ!やった~!」

「甘いな~。」

「そうだね、そう思う、でもあんな嬉しそうな顔見せてもらうと、こっちまで嬉しくなるね。」

本当は、物で釣るような真似はしたくなかったんだけど、自分も子供の頃に買ってもらえなくて、こういうもの欲しかった気持ちってわかるんだ…と、母の恋人は静かに笑った。
その日から、男は二人のアパートにちょくちょく現れるようになり、それまでどこか寂しげだった涼介の顔も明るくなった。





本日もお読みいただき、ありがとうございました。

穏やかな感じで始まりました。
しばらくお付き合いください。
血のつながらない父と子のお話です。(*⌒▽⌒*)♪此花咲耶


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2 Comments

此花咲耶  

鍵付きコメント様

(*/∇\*) キャ~

お恥ずかしい……思いっきり誤字かましてました。
しかも、全然気がつかなかった~(´・ω・`)

ありがとうございます。うれしかったです。(〃゚∇゚〃)

2013/05/31 (Fri) 23:24 | REPLY |   

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2013/05/31 (Fri) 17:45 | REPLY |   

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